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The Memoirs of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの思い出

The Crooked Man 背中の曲がった男 7

Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
「お話、実に興味深い。」とシャーロック・ホームズは言った。
「バークリ夫人との遭遇、そして互いに気づいたことはすでに伺いました。
わかっております、あなたはそのあと彼女を家までおつけになって、窓越しに夫妻の口論をご覧に。あなたへの所業を真っ向なじったに相違ありません。
あなたは感情を抑えきれなくなり、芝地を横切ってふたりに割って入ろうと。」
「そうだ、そして私を見るなり大佐は今まで見たこともない表情をして、そのまま炉格子に頭を打ち付けた。
しかしやつは倒れる前に死んでいた。その暖炉にある引用句がはっきり読めるのと同じくらい、やつの顔から死が読み取れた。
私を目の当たりにして、やつのやましい心が撃ち抜かれたのかもしれない。」
「それから?」
「それからナンシィは気絶、私は彼女の手から戸の鍵をつかみ上げ、錠を開けて助けを呼ぼうと。
が、そうしながらも、放ったまま逃げた方が得だと思って、これでは私が黒に見えるだろうし、何にせよ捕まったら私の秘密もばれる。
あわてて鍵を懐にねじ込んだんだが、そこでテディを抑えているあいだに杖を取り落としてしまい、あいつが窓掛けを駆け上っていってしまって。
抜け出てきた箱にあいつを戻してから、全速力で離れたのだ。」
「テディとは?」とホームズが訊ねる。
 その男は屈んで、隅の檻らしきものの前を引き上げた。
たちまちそこから飛び出てきたのが綺麗な赤茶の生き物。細くしなやかで、オコジョの足に長細い鼻、そしてその真っ赤な目は動物の頭にあるとは思えないほどだった。
「マングースだ!」私は叫んだ。
「ああ、そう言う人もあるが、イクヌーモンとも言う。」とその男。
「私はヘビトリと呼んでいて、このテディはそれはもう素早くコブラを捕まえる。
牙のないのが一匹いるが、テディは毎晩、それを捕まえては食堂のやつらを喜ばせている。
他には何か?」
「うむ、バークリ夫人が窮地にあるとわかれば、またあなたにお願いをせねばならぬやも。」
「その場合はもちろん私の方から。」
「ですがそのとき以外は、死人に鞭打つ必要もありません、卑劣な行いをしたとはいえ。
少なくともあなたは満足しておられる。あの男が三〇年日々おのれの邪よこしまな行為に良心をひどく痛めていたとお知りになったのですから。
ああ、通りの向かいにマーフィ大佐が歩いて。
ここで失礼を。昨日以降の進展が知りたいもので。」
 私たちは大佐が角を曲がらないうちに追いついた。
「やあ、ホームズさん。」と大佐は言った。「もうお聴きですか、この騒ぎ、みな何でもなかったですな。」
「ほほう。」
「検死が先ほど終わりまして、
医者の所見によれば、間違いなく死因は卒中ですと。
まったくあっさりした事件でしたな、結局。」
「いや実につまらない。」とホームズは微笑む。
「行こう、ワトソン、これ以上オールダショットにいる必要がなくなったようだ。」
「ひとついいかい。」と駅へと向かいながら私は言った。
「旦那の名前がジェイムズで、もうひとりがヘンリだとすると、デイヴィドという話は何だったんだ?」
「その一言だ、ワトソンくん、すべての顛末はそれでわかったはずなのだ。僕が君の書きたがるような理想の推理家だとすればね。
あれは間違いなく、なじる言葉だ。」
「なじる?」
「うむ、デイヴィド、つまり旧約で言うダビデは時折やや道を外れる。それにほら、一度などはジェイムズ・バークリと同じ種類のものだ。
ウリヤとバト・シェバの挿話は覚えているね? 
僕の聖書の知識はやや錆びついたおそれありだが、サムエル前書か後書かに、その話が見つかるはずだ。」
 
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Otokichi Mikami, Yu Okubo
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