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The Adventures of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの冒険

A Scandal in Bohemia ボヘミアの醜聞 5

Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫

 三時に遅れることなく、私はベイカー街に着いた。だがホームズは不在だった。
家主の女性によると、朝八時に家を出たきりだという。
私は暖炉のそばに腰掛け、ホームズの帰宅が遅くなろうとも待つことにした。
すでに私は、ホームズの調査に対し並々ならぬ興味を抱いていた。これまで記録した二つの事件のように、奇々怪々たる特徴があるわけではない。事件の性質や依頼人の身分の高さに、独特のものを感じるのだ。
加えて、今回の事件の性質を他にしても、そもそも、ホームズの事件の裏を読む力、鋭く切れる推理のために、私はその捜査方法を研究するのが楽しくてたまらない。快刀乱麻を断つその様を追いかけるわけだ。
いつもうまく解決するのに慣れていたので、ホームズにも失敗することがあるなど、夢にも思わなかった。
 四時頃扉が開くと、酔いどれの馬番が部屋に入ってきた。乱れた髪、ほおひげをたくわえ、赤ら顔で粗野な服といった様である。
我が友人の巧みな変装術は熟知していると思っていたが、それでもホームズであると確信するには三度も見なければならなかった。
うなずくと、ホームズは寝室に姿を消し、五分後いつも通りのツイードを礼儀正しく着用して現れた。
両手をポケットに突っ込み、暖炉の前に足を投げ出したかと思うと、ホームズはしばらく気の済むまで笑い続けた。
「いやはや!」とホームズは叫ぶと、むせかえり、再度笑い出したあげく、ついには椅子の上でぐったりし、動かなくなってしまった。
「何事かね。」
「極めて滑稽なことだ。僕が今朝何をしてきたか、そしていかなる結末に至ったか、君には絶対わかるまい。」
「思いもつかん。
イレーナ、いやイギリス風に発音しよう。つまりアイリーン・アドラー嬢の習慣とか、おそらく家でも見に行ったというところか。」
「ご名答。だが結末は想像を絶する。
まぁ、聞きたまえ。
朝八時少し前、僕は失業中の馬番という設定で、家を発った。
馬を扱う男たちには、強い同業者意識がある。
輪の中に入れば、知りたいことはなんでもわかる。
すぐにブライオニ荘は見つかった。
こぢんまりした住宅で、裏庭があるのだが、通りに玄関がほど近く、二階建てだった。
扉はチャブ錠つき。
右手に広い居間があって、豪華な調度品が並び、床につくほどの大きな窓もあった。窓には子どもでも開けられそうな、頼りないイギリス式の留め金がついていた。
裏手にはこれといった所もなく、ただ廊下の窓が馬車小屋の屋根からなら届きそうだったくらいだ。
屋敷の周囲を一周し、様々な観点からつぶさに調べてみたが、興味を引くものはもうなかった。
 それから通りを徘徊してみると、期待通り、裏庭の壁沿いの小道に厩舎があった。
馬番に馬磨きの手伝いをしてやると、駄賃に二ペンスくれてね、あと一杯のハーフ&ハーフ、シャグ煙草を二服、そして念願のアドラー嬢の情報をあれこれと。たいして知りたくもない近所の人たちの日常を半ダースも聞かされたが。」
「で、アイリーン・アドラーとは何者かね?」と私。
「なんと付近の男どもを皆、虜にしているらしい。
天下この地上において、もっとも麗しき女性である。
とまぁ、サーペンタイン厩舎の男どもは口を揃えている。
生活は平穏で、コンサートで唄いもするが、毎日五時に馬車で出かけ、七時丁度に夕食に戻ってくる。
それ以外に外出するのはまれだ。
訪ねてくるのは男一人のくせして、回数がとても多い。
肌は浅黒く、容姿端麗、爽やかな男ときていて、少なくとも日に一回、たまに二回のときもある。
名はゴドフリィ・ノートン、イナ・テンプル法学院の男だ。
御者に内緒事など、ね。
サーペンタイン厩舎より十数回と送っているから、何もかも知っていた。
ひとしきり話し終えてから、僕はブライオニ荘に引き返し、そばを歩きながら、これからの身の振り方を思案した。
 ゴドフリィ・ノートンはこの件に深く関与していると見ていいだろう。
弁護士だ。不吉な予感がする。
二人の間柄は? 繰り返し訪れ何をもくろむ? 
アイリーンは依頼人か、友人か、はたまた恋人か。
前者ならば、写真は男の元で保管させているだろう。
後者なら、その見込みもない。
考えによっては、ブライオニ荘で仕事を続行せねばならぬし、学院にあるかの紳士の事務所に目を向けなければならぬ。
この微妙な点により、調査が広範囲にわたることとなった。
くどい話で退屈してないか心配だが、状況を理解してもらわねばならんので、小さな問題でも知っておいてほしいのだ。」
「傾聴しているよ。」と私。
「思案に暮れていると、ハンソム型馬車がブライオニ荘にやってきて、一人の紳士が飛び降りた。
 
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo
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