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The Adventures of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの冒険

A Study In Scarlet 緋色の研究 第一部 第六章 4

Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
「シャルパンティエイ夫人が言葉を切ったとき、吾輩はわかりました。この事件、ただ一点がわかればすべてわかると。
女性に効果的な目つきというものがありまして、吾輩、それを使って、夫人にいつ息子が帰ってくるのか、と訊ねました。
『わかりません。』
『わからんと?』
『ええ。息子は鍵を持っていますので、自由に出入りを。』
『あなたが寝た後でしょうか?』
『ええ。』
『寝たのはいつですか?』
『一一時頃。』
『では息子さんは、少なくとも二時間は外に出てたと。』
『ええ。』
『四、五時間ということも?』
『はい。』
『その間、何をしていたのでしょう?』
『わかりません。』と夫人は唇まで真っ青にしました。
 と来れば、これ以上することはありません。
吾輩はシャルパンティエイ中尉の居所を見つけだし、二名の警官を連れていって、青年を逮捕したのです。
吾輩が青年の肩を叩き、同行願うと静かに告げたところ、あの男はずうずうしくもこう言ったんです。『俺をつかまえるのは、あのドレッバーの野郎が死んだせいだろう』って。
こっちは何も言っていないのに、青年がこうも言ったということで、ますます疑惑が深まりましたよ。」
「いかにも。」とホームズ。
「重そうな棒も所持していましたよ、夫人がドレッバーを追うときに青年が持っていたと言ったあれです。
丈夫な楢の棍棒でした。」
「で、君はどう踏んだ?」
「吾輩の読みでは、あの青年はドレッバーをブリクストン通りまでつけていったと。
そこでふたりは口論になって、そのうちドレッバーは棍棒で一撃されたのです。おそらく、みぞおちに入ったため、何の外傷もなく死んだのでしょう。
雨の降りそうな夜でしたから、辺りには誰もいない。そこでシャルパンティエイは被害者の死体を空き家に引きずり込んだわけです。
蝋燭、血、壁の文字や指輪といったものは、たくさん偽の証拠を残すことで、警察の捜査を攪乱しようとしたんですな。」
「上出来だ!」とホームズのおだてるような口ぶり。
「本当に、グレグソン、よくやった。我々もこれから、君に注目せねば。」
「我ながら、素晴らしい捜査ですよ。」と刑事は誇らしげに言い、
「青年の証言によると、彼はドレッバーをしばらくつけていったのですが、相手に気づかれて、馬車に乗って逃げられてしまったそうです。
帰ろうとすると、同船した昔なじみに出会って、ずっと一緒に歩いていたというのですが、
この昔なじみの住所を問いつめても、満足に答えることもできませんでしたよ。
辻褄がぴったり合っていると思いますな。
レストレードのことを考えると、実に愉快です。とっかかりから間違っているんですからな。
あわれですな、何もできやしない。おお、なんと、ここに本人がいるとは!」
 まさしくレストレードその人であった。我々が話している間、階段を上り、今し方部屋に入ってきたのだった。
ところがいつも服装と物腰に充ち満ちている、彼一流の自信と元気がない。
顔にあるのは動揺と不安、服も乱れ、だらしがない。
シャーロック・ホームズへ相談するつもりで来たに違いない。同僚を見た瞬間、戸惑い、いらだち始めたことからもわかる。
レストレードは部屋の真ん中に立ち、いらいらと帽子をいじくり、どうしようかと思案していた。
「この事件は、きわめて異常です。」とレストレードはついに口を開いた――「まったく理解不能です。」
 グレグソンは勝ち誇った口調で、「ああ、君も見つけましたか、レストレードくん! 結果そうなると思ってましたよ。
それで、秘書のジョーゼフ・スタンガスン氏でも見つかったんですか?」
「秘書のジョーゼフ・スタンガスン氏は、」とレストレードは重々しく言葉を紡ぐ。「今朝六時頃、ハリデイ・プライヴェート・ホテルで殺害されました。」
 
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo
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