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The Adventures of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの冒険

The Adventure Of The Blue Carbuncle 青いガーネット 9

Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
『いったいあの鳥をどうしたのさ、ジェム?』と姉が言ったので、
私は、『いや、クリスマスに一羽くれるって言ったじゃないか。だからどれが丸々としてるかなって。』
 すると姉は『ああ、あんたのはもう別に取ってあるよ。ジェムズバードって名付けてね。
向こうにいる白いでかいのさ。
あそこに二六羽いるけど、ひとつはあんたので、ひとつはあたし、あとの二ダースは市場用さ。』と言いました。
 私が、『うれしいよ、マギィ姉さん。でも、姉さんにはみんな同じなんだろうけど、おれはさっきさわってたあいつの方がいいんだよ。』
 そう言うと、『あれは他のより三ポンドも目方があるんだよ。あんたのために特別太らせたってのに。』と姉が返しました。
『まあまあ、あれでいいんだ。じゃあ今持ってくよ。』と私が言うと、
『お好きにおし。で、欲しいのはどれなんだい?』と、ぷんすかしながら、少し怒り気味に言われました。
『白くて、尾に縞のあるやつだよ。群れの真ん中にいる。』
『まあ、なかなかね。絞めるから、持ってきな。』
 そこで私は言う通りにしました、ホームズさん。そしてその鳥をはるばるキルバーンまで運びました。
友人に事の次第を話したんですが、あいつはこういうことを話すにはうってつけのやつなんですよ。
やつは笑って、むせかえりました。私たちはナイフを取って、鵞鳥の腹を開きました。
胸がつぶれそうでしたよ、宝石の影も形もないんです。はっと、どこかで間違えたのだと思いました。
鳥をそのままにして、急いで姉のもとへ戻り、裏庭に飛び込みました。
でももう鳥はどこにもいません。
『ここにいたのはどうしたんだ、マギィ姉さん?』と叫びました。
『問屋に出したけど、ジェム。』
『どの問屋だい?』
『コヴェント・ガーデンのブレッキンリッジだよ。』
『まさか、もう一羽、尾に縞のあるやつがいたか? 持ってったのと同じような?』と訊きました。
『いたねぇ、ジェム。尾が縞のは二羽いたよ。あたしでも見分けがつかないね。』
 そんなわけで、なるほど合点がゆきました。そして全速力でそのブレッキンリッジという男のところへ急ぎました。でもたちまち全部完売で、どこへ売ったかも何も教えてくれません。
今晩あなたもあの男から話を聞きましたね。
そうです、いつもあの調子で。
姉は私がおかしくなったと思っています。
ときどき自分でもそうじゃないかと思います。
ええ、もう……もう私は、私には泥棒の烙印が押されてるんです。結局宝も手に入ってないのに、そのために人の心を売ってしまいました。
ああ天の主よ! お救いください!」
おもむろに男はすすり泣きを始めて、顔を両手で覆うのだった。
 長い沈黙が流れた。聞こえるのは、男の深い呼吸と、シャーロック・ホームズが指先で机の隅を定期的にこつこつと叩く音だけ。
しばらくして我が友人は立ち上がり、扉を開け放した。
「失せろ!」とホームズが言う。
「ええっ! あ、ありがとうございます!」
「何も言うな。失せろ!」
 何も言う必要はなかった。
そそくさ、階段をととととと、戸口をばたん、そして通りからどたばたという駆け足の音。
「つまるところ、ワトソン。」ホームズが手を伸ばして陶製のパイプをつかむ。「僕は警察の尻ぬぐいに雇われているわけではない。
ホーナが窮地にあるなら話は別だが、あの男が出廷してホーナに不利な証言をすることはあるまいし、よって立証も不可能になるしかない。
どうも勝手に減刑をしてしまったようだが、それで人の魂を救うということも、まあありうる。
あの男は今後まっとうに生きるだろう。まったく、あれはおびえすぎだ。
牢にぶち込もうものなら、やつは死ぬまで罪に囚われ続ける。
それに、今は赦しの季節だ。
偶然から僕らは、気まぐれで不思議な事件に出会えたわけで、そいつを解決できたのだから、僕としては上々だ。
もし面倒でなければ呼び鈴を鳴らしてくれないか、博士。もうひとつ調査と行こう。次も、鳥が第一の問題だよ。」
 
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo
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