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The Return of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの帰還

The Adventure Of The Solitary Cyclist 孤独な自転車乗り 9

Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
「その女が最近親なのは間違いなく、なおかつ老人が遺言状を作らないと君たちにはわかっていた。」
「読み書きができませんから。」とカラザズ。
「そこでふたりで帰国し、その娘を捜し当てた。
その思惑は、一方が娘と結婚し、もう一方が得たものの分け前にあずかるというもの。
何らかの理由でウッドリが夫に選ばれた。その理由は?」
「航海中、トランプで賭けた。あいつが勝った。」
「なるほど。君はあの若いご婦人を雇い入れ、そこへウッドリが口説きに来るという手はずだった。
彼女はあの男を飲んだくれのけだものと決めてしまって、てんで相手にしない。
そのうち君たちの取り決めの方がひっくり返る。なにしろ君自身が娘に恋をしてしまった。
もうあの悪党に彼女を渡すなど考えられない。」
「ああ、絶対に、無理だ!」
「仲間割れが起こり、喧嘩別れして、あの男は独自ひとりたくらみを進めていく。」
「たまげたね、ウィリアムソン、この方には言うことが何もない。」とカラザズは声を張り上げ苦笑い。
「そうだ、喧嘩になって私は殴り倒された。とにかく今回でおあいこだ。
そのあとは姿が見えなくなった。そのときにあいつはこの牧師を拾った。
やつらが駅までの通り道沿いのこの場所に家を持ったのは知ってました。
それから私は彼女から目を離さないように。悪いことが裏で進んでいると知っていたからです。
ときどきやつらにも探りを。何をねらっているのか気がかりだったからです。
二日前、ウッドリはこの電報を持ってうちへ来て、ラルフ・スミスが死んだと。
取り決めを守るかと私に尋ねました。
私は嫌だと。
すると私が娘と結婚した場合、分け前はくれるかと。
そうしたいのは山々だが、まず結婚をしてくれないだろうと返しました。
やつは言いました。『結婚させれば、一、二週間もしないうちに少しは違うふうに物を見るようにもなろう。』
私が暴力はごめんだと言いました。
すると口汚いごろつきの本性を露わにして悪態をつき、なら自分がものにすると言い出して。
この週末、あの人は去ることになり、駅まで送ろうと馬車を手に入れたのですが、心は不安でいっぱいだったので自転車で追いかけようと。
しかしあの人は急に出ましたので、追いつかないうちに襲われて。
だからこのことを私が初めて知ったのは、あなた方ふたりが馬車を引き返させてきたときなのです。」
 ホームズは立ち上がって、煙草の吸い殻を火格子に投げ入れて、
「僕は実にのろまだった、ワトソン。」と言う。
「君の報告で、どうも自転車乗りが藪でネクタイを直しているらしいと聞いたとき、それだけでみな悟るべきだったのだ。
とはいえ、奇妙なそしてある意味比類のない事件に僕らは満足していい。
ふむ、田舎の警官が三人、道を来るな。幸いあの馬番の若者も一緒に歩いて来られるようだ。とすれば、彼もあの変わった花婿も、今朝の一件で命を落とさずに済んだというわけか。
思うにワトソン、ひとつ君の医術でもって、スミス嬢に付き添った方がいい。ご加減がすっかりよろしいようなら、ぜひともお母上の元へお送りすると申し出てくれたまえ。
あまりすぐれないようなら、中部の電気技師の若者に電報でもとほのめかせば、きっと全快する。
さてそれではカラザズくん、君は荷担した悪事の埋め合わせになるだけの努力はしたと、僕は思っている。
名刺を差し上げるから、もし僕の証言が君の裁判で役に立つなら、ご随意に。」
 我々の活動は絶え間なくめまぐるしいから、読者諸君もおそらくご推察のことだろうが、しばしば私にとって困難となるのが、物語を締めくくること、つまり世の人々の知りたがるであろう事後を細かに記すことなのである。
個々の事件はまた別のものの序曲であり、いったん山場を越えると役者たちは忙しい我々の日常から永遠に退場してしまう。
しかしこの件についての覚え書きの末尾には短い追記があって、そこにつけた記録によれば、ヴァイオレット・スミス嬢は大きな財産を相続し、現在はウェストミンスタのかの有名な電気業者モートン&ケネディの社長たるシリル・モートンの妻であるという。
ウィリアムソンとウッドリは、どちらも誘拐と暴行のかどで裁判にかけられ、前者は七年、後者は一〇年とのことだ。
カラザズのその後については何も記されていないが、ウッドリは危険な悪党との評判であったから、確か裁判では彼の暴行は重く見られず、数ヶ月という求刑でうまく落ち着いたのだと思う。
 
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Otokichi Mikami, Yu Okubo
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