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The Adventures of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの冒険

The Adventure Of The Speckled Band まだらのひも 4

Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
「毒殺については?」
「お医者さまがお調べになりましたが、結果は何も。」
「では、お気の毒なお姉さまは何の原因で亡くなったのだと?」
「姉は激しい恐怖のために、びっくりして、それで死んだのだと思います。もっとも、何が姉を驚かせたのかは分かりません……」
「ロマは、そのとき、敷地の中にいたのですか?」
「はい、だいたいいつも、どこかにおります。」
「ふむ。――それから何かお心当たりはありますか? ひも……まだらのひも、に。」
「姉が夢中に叫んだうわ言かとも思い、またそれは敷地にいるロマのことではないかとも思い……
多くの者が頭に水玉の模様があるハンカチーフを巻いておりますが、それが姉の使った言葉に関係があるのかは、ちょっと。」
 ホームズもよく分からないという風に、首を横に振る。
「まさに深い海、ですね。どうぞ先をお話ください。」
「事件から向こう二年間、先頃までさみしく暮らしてまいりました。
けれども、一ヶ月前、長年の友人のおかげで、わたくしにも結婚を申し込む方が現れました。
お名前はアーミティッジ――パーシィ・アーミティッジ――アーミティッジ家の次男で、レディングのそばのクレイン・ウォータにお住みです。
父も反対致しませんので、春のうちに式を挙げる予定です。
ところが昨日から屋敷で西棟の修理が始まり、わたくしの寝室は壁に穴が開きましたので、やむを得ずわたくしは、亡くなった姉の部屋へ、姉の使っていた寝台へ移ることになりました。
考えてみてください、昨夜のわたくしがどれだけ恐ろしくてふるえたことか。眠れずに姉の恐ろしい最期が頭から離れずにいると、真夜中の静けさの中に、姉の死の先触れとなりましたあの低い口笛が聞こえたのでございます。
わたくしは飛び起きてランプをつけましたが、部屋には何も見あたりません。
でも、もう恐ろしくて寝台にも戻れず、そこで着替えて、夜明けが来ると家を抜け出し、お向かいのクラウン・インという旅館で二輪馬車を頼みまして、レザヘッド駅へ駆けつけ、それからこうして今朝、こちらへお助けをお願いに参ったのでございます。」
「賢明な行動です。お話はそれですべて?」
「ええ。」
「お嬢さん、まだあります。
父親のことをお隠しです。」
「どういうことでしょうか?」
 返事の代わりに、ホームズは依頼人の膝に置かれていた腕を取り、黒いレースの袖口をつまんで折り返した。
五つの小さな青痣――五本指でつけた痕――が、白い手首に残されていた。
「ひどい扱いを受けていらっしゃる。」ホームズが言った。
 ご婦人は顔を赤らめ、痣のついた手首を袖の下に隠した。
「すぐ手の出る人で、きっと力の加減がわからないのです。」
 長い沈黙が続いた。ホームズは両手にあごを乗せ、暖炉に燃えさかる火の中をじっと見つめていたが、やがて、
「深い事情があるようで。」 と口を開いた。
「これからどう動くかを決める前に、知っておきたいことが山のようにありますが、
一刻の猶予もありません。
いかがですか、今日ストーク・モランへ出向いて、父親に知れないよう見せていただくのは。」
「折よく父も大事な用でロンドンへ出ると申しておりました。
日中は留守にしているでしょうから、大丈夫でございましょう。
家政婦がひとりおりますが、耄碌しているお婆さんですから、外へ出てもらうのは訳ないかと。」
「好都合です。君も出かけるのに異存はなかろう、ワトソン?」
「異議なし。」
「ではふたりで参ります。
あなたはどうなさいますか?」
「せっかくロンドンへ参りましたので、これからひとつふたつ用を済ませたいと存じます。
ですが十二時の汽車で帰りますので、先生方のご来訪には間に合うかと存じます。」
「ではお昼過ぎに、ふたりで伺います。
私も二、三、片づけておきたいことがありますので。
よろしければ、朝食などいかがですか?」
「いえ、おかまいなく。悩みを打ち明けまして、心が軽くなりました。
午後お目にかかるのをお待ち致しております。」
依頼人は黒い面紗を顔の前に下ろすと、静かに退室した。
 
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo
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