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The Adventures of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの冒険

The Red-Headed League 赤毛組合 2

Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
 ジェイベス・ウィルソン氏は大笑いし、
「いやはや、こんなの初めてだ!」と言った。
「わしは初め、あんたが何かうまい方法でも使ったのかと思っとった。だが、結局は何でもないことなんですな。」
「覚えておこう、ワトソン。」ホームズは私の方を向いた。「細々と説明するのは損だ、とね。
『未知なるものはすべて偉大なりと思われる。』……僕の評判もあまり大したものでもないが、あまり正直にしゃべっていると、やがては地に落ちてしまう。
ところでウィルソンさん、広告は見つけられましたか?」
「ええ、見つけましたとも。」ウィルスン氏は太く赤い指を中ほどの欄に下ろした。
「これです。これが事の始まりだったのです。自分自身でご覧になって下さい、ホームズさん。」
 私は新聞を受け取り、次のように読み上げた。
赤毛組合に告ぐ――米国ペンシルヴァニア州レバノンの故イズィーキア・ホプキンズ氏の遺志に基づき、今、ただ名目上の尽力をするだけで週四ポンド支給される権利を持つ連盟員に、欠員が生じたことを通知する。
赤髪にして心身ともに健全な二十一歳以上の男性は誰でも資格あり。
月曜日、十一時、フリート街、ポープス・コート七番地、当連盟事務所内のダンカン・ロスに直接申し込まれたし。
 私は、この奇怪極まる広告を二度読み返した。「……意味がさっぱりわからん!」口をついて出たのは、こんな叫びだった。
 ホームズはくすくすと低い声で笑い、椅子に座ったまま身体を揺すった。これはホームズが上機嫌のときの癖である。
「これはこれは、少々常軌を逸した話だ。ほう。」とホームズは呟く。
「ではではウィルソンさん、早速取りかかりましょうか。あなたと家族のこと、そして広告に従った結果、生活にどんな影響があったのかを教えてください。
博士、君は新聞の名前や日付を書き留めてくれないか。」
「一八九〇年四月二十七日、モーニング・クロニクル紙。ちょうど二ヶ月前だ。」
「うむ、結構。ではウィルソンさん、どうぞ。」
「ええと、それは先ほどシャーロック・ホームズさんに申し上げたとおりで……」ジェイベス・ウィルソンは額の汗を拭い、話を続けた。「わしは中心区《シティ》あたりのコバーグ・スクエアで小さな質屋業を営んでおります。
と言っても、手広くやっているわけでもなく、近頃はどうもさっぱりで、一人でようやく暮らしていけるという有様ですわ。
昔は店員を二人雇うことが出来たんですが、今は一人しかございません。本来なら払うのも難しいところなんですが、本人が見習いでいいからと他の半分の給料で来てくれとるんです。」
「その見上げた青年の名前は?」シャーロック・ホームズは尋ねた。
「名を、ヴィンセント・スポールディングと言うんですが、青年というほどじゃありません。
あれは年の見当がつかんのです。
だが、店員としてはとても利口なやつでさぁ、ホームズさん。他で働きゃあ今の倍は稼げる腕があると、わしゃ踏んどるんです。
まぁ、あれが満足してるんだから、入れ知恵する必要もありますまい。」
「確かに、その通りです。あなたも運のいい方です。相場以下で従業員を雇えるとは。
今のご時世、なかなかそううまくはいかないものです。
変わりものという点では、その従業員と広告、甲乙付けがたいと言えます。」
「いや、実は、あれには欠点もありまして……」ウィルソン氏は苦い顔をした。
「あれほど写真の世界につかりきった男はそこいらにおりますかな? 
あれは見習い修業もせなならんのに、カメラを持ち出して、ぱちぱちぱち、とやっては、ウサギが穴にはいるように地下室へ潜り込んで、写真を現像しよるんです。
それがあれの粗なのですが、大まかに見りゃあ、いい仕事をしとります。
悪いやつでもありゃしません。」
「察するに、彼はまだ店にいると?」
「ええ、そうですとも。
あれと十四になる娘っ子がおります。これが簡単なまかないと掃除をしてくれとるんですわ。わしの家はこれだけです。わしは男やもめでして、家族もありません。
わしらは三人でひっそりと暮らしているんですよ。たいしたこたぁできませんがね、一つ屋根の下で夜露をしのぎ、借りた金を返すくらいのことはしております。
 そこへこの広告ですよ。この広告が面倒の始まりだったんでさぁ。
 
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo
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