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The Adventures of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの冒険

The Adventure Of The Noble Bachelor 独身の貴族 1

Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
セント・サイモン卿の結婚とその奇妙な結末は、不運な花婿が行き交う高貴な界隈では、関心の対象ではなくなって長い時間が経った。
新たなスキャンダルがそれに取って代わり、より刺激的な内容により、この4年前のドラマは噂に上らなくなった。
しかし、事実の全容が一般大衆に明らかにされることはなかったと信じるに足る理由があり、また、私の友人であるシャーロック・ホームズも、この問題を解決するためにかなり貢献をしたことから、私はこの驚嘆すべき事件について少しでも触れることなくしては、シャーロックホームズの回想録は完全にはならないと感じている。
私が結婚する数週間前、まだベーカー街でホームズと同室だった頃、ホームズが午後の散歩から帰宅すると、テーブルの上に手紙が置いてあった。
私は一日中家に閉じこもっていた。天気が急に雨に変わり、秋の強風が吹き荒れると、アフガン遠征の遺物として片方の手足に持ち帰ったジェゼール弾が鈍い痛みで疼きだしたからだ。
体は安楽椅子の上に、足は別の安楽椅子の上に置いたまま、私は新聞に囲まれていたが、とうとうその日のニュースで飽和状態になり、それらをすべて脇に投げ捨て、テーブルの上に置かれた封筒に描かれた巨大な紋章とモノグラムを眺めながら、友人の高貴な文通相手は誰だろうとぼんやり考えていた。
「上流社会からの手紙が着ている」彼が入ってくるなり、私は言った。
「君の朝の手紙は、私の記憶が正しければ、魚屋と港湾税関職員からだったね」。
「私の手紙は確かにバラエティに富んでいる。」彼は微笑みながら応えた。「そしてたいていは質素な手紙のほうがが面白いものが多い。
この手紙は、ありがたくない招待状だろう。こんなのに応じていったら、退屈させられるか嘘をつかされるかどっちかだ。」
彼は封を切り、中身に目を通した。
「おやおや、何か興味深いものかもしれないな」
「社交の招待状じゃなかったのかい?」
「ちがう。明らかに仕事の依頼だ」。
「高貴な顧客から?
「英国でも指折りの名門だ」
「気取らずに、断言するがね、ワトソン君、私にとって、事件のおもしろいかどうかに比べれば依頼人の地位など大した関心事ではない。
しかし、この新しい捜査では、そのことを望めない可能性もある。
君はこのところ熱心に新聞を読んでいるね」。
「そのとおり」と私は残念そうに言い、隅にある巨大な束を指差した。
「他にすることがなかったんだ」。
「それは幸運なことだ。たぶんぼくに情報を提供してくれるだろうからね。
私は犯罪ニュースとお悩み相談以外は何も読まない。
後者はいつも勉強になる。
でも、最近の出来事をよく見ているのなら、セント・サイモン卿と彼の結婚式のことは知っているだろう?」。
「ああ、とても興味深くね」
「そうか。
私が手にしているのは、その聖サイモン卿からの手紙だ。
読んでみるから、その代わり、そこの新聞をめくって、この件に関係するものは何でも私に渡してほしい。
こう書いてある:
「親愛なるシャーロック・ホームズ殿、
バックウォーター卿から、私はあなたの判断力と思慮深さに全面的に信頼を置いてよいと聞いています。
そこで、私の結婚式に関連して起こった非常につらい出来事について、あなたを訪ね、相談することにしました。
ロンドン警視庁のレストレード氏がこの件に関してすでに行動していますが、彼はあなたの協力に異存はないと断言していますし、何らかの助けになるとさえ考えているようです。
私は午後の4時にお伺いするつもりですが、その時間に何か他の予定があるようでしたら、この件は最重要事項ですので、延期していただければと思います。
誠意をもって、ロバート・セント・サイモン」
「グロブナー・マンションから出されたもので、羽根ペンで書かれている。閣下は不幸にも右手の小指の外側にインクのしみをつけてしまった。」ホームズは手紙を折りたたみながらいった。
「彼は4時だと言っている。今3時だ。あと一時間でやって来るな」
「それなら、君の協力があれば、この件について整理しておく時間がある。
その新聞をめくり、時間の順に抜粋を並べてくれないか。その間に私はこんどの依頼人がどういう人物なのか調べるから。
彼はマントルピースの横に並んだ参考書の中から赤い表紙の本を選んだ。
「これだな」と彼は言い、座って膝の上に置いた。
「ロバート・ウォルシンガム・ド・ヴェール・セント・サイモン卿、バルモラル公爵の次男」。
「ふむ!紋章:空色の地に黒い中帯、その上に三個の鉄菱。
1846年生まれ。
晩年の政権では植民地担当次官を務めた。
父公爵は外務大臣を務めたこともある。
彼らは直系でプランタジネット家の血を受け継ぎ、母方はチューダー家の血を受け継いでいる。
はは!さて、これだけでは何の参考にもならない。
もっと確かなものを求めて、ワトソン君に頼ることにしよう」。
 
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle
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