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The Story of William Wilson Part Four(2) ウィリアム・ウィルソンの物語


The Story of William Wilson Part Four ウィリアム・ウィルソンの物語
EDGAR ALLAN POE: STORYTELLER. エドガー・アラン・ポー物語シリーズ
もう一つ気がついたことは、彼はいつも私と同じ服装をまとっているが、もう私には顔を見せなくなったことである。
私には彼の顔がわからないとでも思っていたのだろうか。
彼はオックスフォードで私の名誉を破壊し、ローマで高い地位につこうとした私の計画を妨害し、ナポリで私の恋のじゃまをし、エジプトで私の願望、彼に言わせれば私の貪欲を妨害したのである。
彼が学校時代のウィリアム・ウィルソン、あの忌みきらい恐れていたウィリアム・ウィルソンであることに、私が気づかないなんてことがあるとでも思っているのだろうか。
それはともあれ、私はこの物語のラストシーンへ急ぐことにしよう。
そのころまで、私は彼に対してやり返すようなことはしなかった。
彼は高潔で英知に富みどこにでも遍在できたし、何ひとつ知らないことがなかったのである。
私は彼に対して驚きと恐れを強く感じていたので、自分は弱々しく無力であると思い込んでいた。
私は腹立たしくはあったけれども、それまでは彼の言うなりになってきたのである。
しかし、もうそのころには、私は彼の監督から逃れたいという気持ちが次第に強くなっていた。
私のほうが強くなっていくにつれて、彼のほうは次第に弱くなっていくように私には思えた。
私は心の中に燃えるような希望を感じた、私は心の底から、必ず自由になってみせるぞと固く意を決したのである。
私がディ・ブローリオー公爵の大邸宅で催された舞踏会に出かけたのは、1835年のカーニバル中のローマでのことであった。
私はいつもより酒が入っていたし、どの部屋もこみ合っていて暑かったようだ。
私は人ごみを押しわけていくのが腹立たしくなった。
私は捜していたのだ、動機については触れないことにするが私は年老いたディ・ブローリオーのあの若くて陽気で美しい細君を捜していたのだ。
私はふいに彼女の姿を見かけた。ところが、人ごみを分けて彼女のところへ行こうとした時、私はだれかが肩に手をかけたのを感じ、あの片時も忘れたことのないささやきが耳の中から聞こえてきたのである。
私は怒り狂って、彼をぎゅっとひっつかんだ。
ウィルソンは案の定、私と同様りっぱな青いコートを着こんでいた。
腰に巻いた赤いサッシュからは、鋭い長い剣がぶらさがっていた。
顔は黒い布ですっかり覆われていた。
「また、来やがったな」私は叫んだ。一言しゃべるごとに、私の怒りは高まっていった。
「こういう時にきまって現れるのはおまえなんだ。
もう許さないぞ。おれが死ぬまでこうしてつきまとおうったって、そうはさせないぞ。
さあおれについてこい。それともこの場で殺されたいのか」
私はそばにあった小さな部屋まで、彼を引っ張っていった。
私は彼を壁にたたきつけると、ドアを閉めた。
そして、彼に剣を抜けと命じた。
彼はほんの少し間を置いて、剣を取ってさあ来いと身構えた。
勝負はあっけなく終わった。
私は憎しみと怒りに燃えていたので片腕に千人もの力がこもっているように感じた。
私はあっという間に彼を壁に押しつけ、彼は私のなすがままになった。
私は大急ぎで荒々しく、何度も何度も彼の心臓に剣を突き刺した。
その時、だれかがドアを開けようとしているのが聞こえた。
私はさっとドアのところへ行って固く閉めると、今にも息を引き取ろうとしている私の敵のところへ引き返した。
その時目にした光景がどんなに恐ろしいものだったか、この驚きをことばで説明することは到底できない。
私がドアを閉めようとして、そのほうに向いていたほんのわずかの間に、部屋の向こうの端に重大な変化が起こっていたのである。
もと何もなかったところに大きな鏡つまり姿見、いや、私にはそう見えたのだ、が立っていた。
恐る恐るそのほうへ歩み寄るにつれて、私には自分自身の姿が見えてきたのだ。それは血にまみれ、まっ青な顔をして力なくよろめきながら自分のほうに向かってくる私自身の姿だった。
いや、私にはそう見えたんだが、実はそうではなかったのだ。
私の敵のウィルソンが断末魔の苦しみに耐えながら、そこに立っていたのである。
彼の仮面もコートも床の上に落ちていた。
彼の服といい顔といい、私自身と違う点はどこにも見当たらなかったのである。
それはまさにウィルソンにはちがいなかったのだが、彼の話す声はもう私自身の声に変わっていた。彼はこう言った。「おれの負けだ。
だが、今以後はおまえも死んでいるのだ、この世も、天国も、希望も、もうおまえにはないのだ。
おまえはおれの中で生きていたのだ。だから、おれが死んだ今となっては、このおまえ自身の顔を見れば、おまえがどれほど完膚なきまでにおまえ自身を殺してしまったか、よくわかるはずだ」
お送りしましたのは、エドガー・アラン・ポオの『ウィリアム・ウィルソンの物語』の第4部、最終回でした。
この物語は「やさしい英語」で書いたものをリチャード・バウアーが朗読したものです。
制作者はフィリップ・ターナーでした。
この物語は、特にアメリカの口語英語の理解に役立つように朗読したものです。
また、これらの朗読は英語を話すのにも役立つことでしょう。
「やさしい英語」で聞けるポオの小説には、このほかに、次のようなものが用意されています。『アモンティラードーの樽』『モルグ街の殺人事件』『赤死病の仮面』『おしゃべりな心臓』『アッシャー家の崩壊』などです。
 
Reproduced by the courtesy of the Voice of America
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