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The Story of William Wilson Part Four(1) ウィリアム・ウィルソンの物語
The Story of William Wilson Part Four ウィリアム・ウィルソンの物語
EDGAR ALLAN POE: STORYTELLER. エドガー・アラン・ポー物語シリーズ
100年余り昔のアメリカの作家、エドガー・アラン・ポオが書いた短編の一つを、「やさしい英語」の朗読でお送りします。
これらの物語は、特にアメリカの口語英語の理解に役立つように書いてあります。
また、これらは英語を話すのにも役立つことでしょう。
きょうは、ポオが書いた『ウィリアム・ウィルソン』という小説の第4部、最終回を聞いていただきましょう。
これは、1人の男が正邪の判断について、自分自身と戦う物語・・・つまり、ある男の良心との戦いの物語です。
私は前回の話の終わりのところで、グレンディニングという青年紳士とトランプのゲームをした夜のことをお話していた。
私たちがいた部屋は、オックスフォード大学の友人の一人の部屋だった。
私は、もともと低能のうえに酒で頭がぼんやりしていたあの青年から、彼の全財産を巻き上げてしまったことに気づいたばかりだったのだ。
前にも言ったように、私がまだどうしていいか迷っていたところへ……
部屋の明かりは全部消えてしまったが、私はその前に1人の男が入ってきたのを見かけたのだ。その男は私と同じくらいの背で、たいへんりっぱな長いコートを着ていた。
しかし、まっ暗になってしまうと、彼が私たちの中に立っているのが、感じられるだけだった。
静かな低い声だったが、到底忘れることのできない声で、私は骨身にしみる思いがしたのである。そのような声で彼は言った。「諸君、私は自分の役目を果たすために、やってきたのです。
皆さんは、今夜ミスター・グレンディニングから巨額の金を巻き上げた男の本性をご存知ないはずです。
彼に上着を脱がせてください。そうして、その中をよくごらんになるのです」
その男がしゃべっている間、部屋の中では何ひとつ物音が聞こえなかった。
その男はしゃべり終えると、また入ってきた時のように、さっといなくなってしまった。
その時の私の気持ちをお話することが果たしてできるだろうか、いや、お話することが妥当かどうか……
私が恐ろしかったことは言うまでもないし、悪人の刻印を押された者のあの耐えがたい恐怖を感じた、などということも、今更口に出して言うこともないだろう。
仲間たちは上着の中に、強いカード、つまり、私たちがやっていたゲームで勝つために必要な貴重なカードが入っているのを見つけた。
このカードを使えば、私はだれと勝負をしても、その相手の金を巻き上げることができたのである。
ミスター・プレストン・・・私たちがいたのは彼の部屋であるがやがてこう言った。「ミスター・ウィルソン、これはきみの物だよ」
彼は床の上からりっぱな温かそうなコートを取り上げて、ことばを続けた。「同じことを証拠だてるためにこの中を調べてみるのはよそう。
きみは大学を立ち去らねばならないことはわかっているだろうね。
少なくともぼくの部屋からは立ち去ってもらわなくてはならない。しかも、今すぐに」
私は、ひどい屈辱感に打ちのめされていたが、あの時全く意外なものが目に入っていなかったならば、彼の言ったことばを聞いて、私は彼に一撃を加えようとしていたかもしれない。
私のコートは普通の人には手が出ないほど高価なものだったし、特に注文して作らせたものだったのだ。
私は、同じコートがこの世に2つあるとは思えなかった。
だから、ミスター・プレストンが床から拾い上げたコートを手渡してくれた時は、自分のコートがその前から私の腕にかかっていたことと、2つのコートがあらゆる点でよく似ていることを知った時、私は恐怖におびえた。
私は、全く不可解なやり方で部屋に入りそして出ていった、あの不思議な人物がコートを着ていたことを思い出した。
私たちのグループには、私のほかにはコートを着ているものはいなかった。
私はプレストンが差し出したコートを自分のコートの上にかけて、彼の部屋を立ち去った。
翌朝、私はオックスフォード大学をたって急ぎの旅に出た。
町から町へと旅をしたが、ウィルソンは私の行く先々に現れたのである。
パリ、ローマ、ウィーン、ベルリン、モスクワどこへ行っても、彼は私のあとを追ってきた。
私は恐ろしい病気から逃れようとしているかのように、おびえながら逃げ回ったが、それでも彼はついてくるのだった。
私は何度も自問した。「やつは何者だ。どこから来たのか。一体、何が目当てというのだ」
しかし、何ひとつ答えらしいものは見つからなかった。
そこで、私は、彼が私を見張っている方法を念入りに調べてみた。
しかし、それでわかったことというのは無に等しかった。
それでも目についたことは、彼が現れるのは、今では、よこしまな結果をもたらしそうな行為を私がしないように制止しようとする時だけである、という点である。
それにしても、私を監督しようなんて権利が彼にあるはずがないではないか。
Reproduced by the courtesy of the Voice of America