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The Story of William Wilson Part Three(2) ウィリアム・ウィルソンの物語


The Story of William Wilson Part Three ウィリアム・ウィルソンの物語
EDGAR ALLAN POE: STORYTELLER. エドガー・アラン・ポー物語シリーズ
私はまもなくオックスフォードへ行った。
両親は、イングランド中で最も裕福な家庭の息子たちのような生活ができるくらい、十分に金を送ってくれた。
こうなると今度は私の本性が2倍も激しくなって現れてきた。
私はすべての名誉をかなぐり捨てた。
金遣いの荒い連中の中にあっても私は群を抜いていたし、昔からこの大学ではだれもが知っている悪行のほかに新しい形の悪行を考えだした。
しかも、私はさらに身を落とした。
容易には信じてもらえないかもしれないが、私が紳士としての身分を忘れていたのは事実だ。
トランプで生計を立てている連中が使う卑劣な手口を覚え、これを自分でも使っていた。
私は老練な博打うちのように、金もうけのためにトランプをやっていたのである。
しかし、私の友人たちは私を信用してくれていた。
彼らにとって、私は快活で高潔なウィリアム・ウィルソンであって、このウィルソンはだれかれなくプレゼントをくれるし、若くて多少風変わりな考えを持ってはいるが真に悪いことはできない人物だったのである。
この手で2年間は首尾よくやっていた。
そしてそのころ、ある青年が大学へ入ってきた。グレンディニングという名の青年で人のうわさによると、あっという間にいとも簡単に大金持ちになったのだそうだ。
私はすぐこの男が低能であることを見抜いた。
おかげで、言うまでもなく、トランプで彼の金を巻き上げるのは簡単だった。
私はしばしば彼と勝負をした。
初めのうちは、私も博打うちの常とう手段を用いて彼にもうけさせてやった。
やがて、私の計略が威力を発揮する時がきた。
私はある晩、もう一人の友人であるミスター・プレストンの部屋で、グレンディニングと一緒になった。
そこには8人ないし10人のグループの人がいた。
私は綿密な計画に従って、我々が偶然トランプをやり始めることになったかのように見せかけた。
事実、トランプのゲームのことを言い出したのはほかならぬグレンディニングだったのだ。
私たちは夜が更けるまでゲームを続けたが、とうとうほかの連中はゲームからおりてしまった。
そこで、私は連中の見ている前で、グレンディニングと2人きりで勝負をすることになった。
ゲームは私が最も得意とするエカルテというやつだった。
グレンディニングはどういうわけか、ひどくいらいらしながらゲームをしたが、私はひとつには彼がそれまでずっと飲みつづけていた酒のせいかなと思った。
彼はあっという間に私を相手に巨額の金をすってしまった。
すると、彼は賭金を今までの倍にしようと言い出した。
これは私の計画どおりではあったのだが私はいかにも気がすすまないと言わんばかりの素振りをしてみせた。
私はやっとのことで彼の申し出に応じた。
彼は1時間後には、それまでの4倍の金をすってしまった。
どうしたことか、彼はまっ青な顔になっていた。
私は、彼は金持ちだから、金をするくらいのことは苦にならないはずだと思っていたので、顔の色がまっ青になっているのは酒の飲み過ぎにちがいないと思っていた。
私は仲間たちの非難を恐れて勝負をやめようとしたが、ちょうどその時、彼が発した途切れ途切れの叫び声と彼の目つきから察して、彼が全財産をなくしてしまったことがわかった。
もともと低能のうえ酒でさらに頭がぼんやりしていた彼はあの晩はとてもゲームができるような状態ではなかったのである。
しかし私は彼を止めなかった。私は彼を破滅に追いこむために、この状態を利用したのだ。
部屋の中は水を打ったように静かだった。
私は仲間たちの氷のような冷ややかさを感じた。
もし、その時、あの部屋の幅広のどっしりとしたドアが突然開かなかったら、私はどうしていたかわからない。
部屋の明かりは全部消えてしまったが、私はその前に1人の男が入ってきたのを見かけたのだ。その男は私と同じくらいの背でたいへんりっぱな長いコートを着ていた。
しかし、まっ暗になってしまうと、彼が私たちの中に立っているのが感じられるだけだった。
やがて、彼の声が聞こえた。
静かな低い声だったが、到底忘れることのできない声で私は骨身にしみる思いがしたのである。そのような声で彼は言った。
「諸君、私は自分の役目を果たすために、やってきたのです。
皆さんは、今夜ミスター・グレンディニングから巨額の金を巻き上げた男の本性をご存知ないはずです。
彼に上着を脱がせてください。そうしてその中をよくごらんになるのです」
その男がしゃべっている間、部屋の中では何ひとつ物音が聞こえなかった。
その男はしゃべり終えるとまた入ってきた時のように、さっといなくなってしまった。
お送りしましたのは、エドガー・アラン・ポオの『ウィリアム・ウィルソンの物語』の第3部でした。
この物語は「やさしい英語」で書いたものを、リチャード・バウアーが朗読したものです。
制作者はフィリップ・ターナーでした。
この物語は、特にアメリカの口語英語の理解に役立つように朗読したものです。
また、これらの朗読は英語を話すのにも役立つことでしょう。
では、次回は、『ウィリアム・ウィルソンの物語』第4部をお送りします。お聞き逃しのないよう。
 
Reproduced by the courtesy of the Voice of America
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