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Episode-1 Feathertop(2) フェザートップ


Episode-1 Feathertop(Nathaniel Hawthorne) フェザートップ(ナサニエル・ホーソン)
AMERICAN SHORT STORIES
それからリグピーばあさんは,フェザートップに歩くように命じました.
「前へ進みなさい」彼女は言いました.
「おまえの前には世界が広がっているのよ」
フェザートップは片手を前に出して,何か支えになるものはないかと捜しました.
それと同時に,かかしは片方の足をやっとの思いで前へ押し出すようにしました.
しかし,リグピーばあさんが大声でどんどん歩けと命じますので,彼はまもなく前進し始めました.
そうすると,おばあさんは言いました.「まるで人間みたいだね.歩き方も人間そっくりだし….
今度は人間みたいに話すことを命じるわよ」
フェザートップは,はあはあ言いながら苦心したあげく,とうとうひそひそ声で言いました.「かあさん,ぼくは話したいと思ってるんだけど,脳みそがないから,
なんと言っていいかわからないんだよ」
「ほうら,話せるじゃないの」リグピーばあさんは言いました.
「さて,何を話させてあげようかね.
決して恐れることはないんだよ.
おまえは世間に出ていくと,たくさんのことを話すようになるだろうし,何度も同じことを話すようになるんだよ.でもね,何度も繰り返し繰り返し話していても,実際は何も言っていないのと同じなのさ.
だから,ただ小鳥がさえずるようにおしゃべりをしていればいいんだよ.
おまえにだってその程度の脳みそは,だいじょうぶあるんだから」
リグピーばあさんは,フェザートップにお金をたくさんあげました.そして,こう言いました.「さあ,もうこれで,おまえはだれにも負けないりっぱな人間になったんだから,堂々と胸を張っていればいいんだよ」
しかし,おばあさんは彼にパイプをなくしてはいけないこと,パイプの煙を絶やしてはいけないこと,などを厳重に言い渡しました.
彼女は,もし彼のパイプの煙が絶えるようなことがあったら,彼は地上に倒れて,ただの1束の棒切れにもどってしまうだろうと警告しました.
「心配しなくていいよ,かあさん」フェザートップは大声で言うと,口から大きな煙の塊を吐き出しました.
「さあ,お行き」リグピーばあさんは,フェザートップを玄関から外へ押し出しながら言いました.
「世界はおまえのものなのよ.
もしだれかがおまえの名前をたずねたら,ただフェザートップと言えばいいんだよ.
帽子に羽がついてるだろう,それにおまえの頭の中にも羽をひと握り入れてあるからだよ」
フェザートップが町へ出てみると,通りには人気がありませんでした.そのうち,町の中でも特ににぎやかな通りの一つを歩いていくと,大勢の人たちが彼を見るようになりました.
人々が見ていたのは,彼の美しい紫色のコートや,白い絹のストッキングや,彼が左手に持っていたパイプでした.彼はこのパイプを,5歩歩くごとに口にくわえなおしていたのです.
みんなが彼のことを,たいへん偉い人が町を訪れているのだと思っていました.
「なんとりっばな気品のある顔をしたお方だろう」
ある男の人が言いました.
「きっと偉い人なんだ」別の人が言いました.
「偉大な指導者にちがいない」
フェザートップが町外れに近いもっと静かな通りを歩いていきますと,とても美しい少女が小さな赤いれんがの家の前に立っているのが目につきました.
小さな男の子が少女の横に立っていました.
美しい少女がフェザートップにほほえみかけますと,彼女の心に愛情が芽生えました.
そのせいで,彼女の顔全体が太陽にパッと照らされて,明るく輝き始めました.
フェザートップは彼女を見つめていると,今までに経験したことのない気持ちに襲われるのでした.
急に彼には何もかもが少し変わって見えるのでした.
辺りは不思議な興奮で包まれました.
道路には太陽がさんさんと輝き,通りを行く人々は踊りながら通り過ぎていくように見えました.
フェザートップは衝動にかられて,ついこのほほえんでいる若くて美しい少女のほうへ歩み寄りました.
彼が近づくと,彼女の横にいた男の子がフェザートップを指さして言いました.「ポリー,見てごらん,この人には顔がないよ.
かぼちゃじゃないか」
フェザートップはそれ以上近づくのをやめて回れ右をし,町の通りを通って大急ぎで自分の家に向かいました.
リグビーばあさんはドアを開けますと,そこに,感情の高ぶりのために震えているフェザートップを見かけました.
彼は辛うじてパイプを吹かしていましたが,棒切れがガタガタいう音,あるいは骨がガラガラいうような音を立てていました.
「一体,どうしたの」リグピーばあさんは言いました.
「かあさん,ぼくは何ものでもないんだね.
ぼくは人間なんかじゃなくて,
ただのぷかぷかした煙なんだね.
ぼく,煙なんかじゃなく,何かほかのものになりたいよ」
こう言うとフェザートップはパイプを取って,それを渾身(こんしん)の力をこめて床の上に投げつけました.
彼はその場に倒れ,かぼちゃの顔が壁のほうへ転がっていくと,1束の棒切れとなりました.
「まあ,かわいそうなフェザートップ」リグピーばあさんは,床の上の積み上げた束を見て言いました.
「あの子はかかしにしてはできすぎていたし,
人間にするにもできがよすぎたんだわ.
でも,彼はこれからは,夏中とうもろこしのそばに立って鳥たちからとうもろこしを守っていれば,もっと幸せになれるんだ.
だから,もう一度あの子をかかしにしてやりましょう」
ナサニエル・ホーソン原作のアメリカの短編小説『フェザートップ』をお送りしました.
「アメリカの声」では来週もこの時間に,特別英語による次のアメリカ短編小説をお送りします.
 
Reproduced by the courtesy of the Voice of America
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