※本文をクリック(タップ)するとその文章の音声を聴くことができます。
右上スイッチを「連続」にすると、その部分から終わりまで続けて聴くことができます。
※ "PlayBackRate" で再生速度を調節できます。
Episode-1 Feathertop(1) フェザートップ
Episode-1 Feathertop(Nathaniel Hawthorne) フェザートップ(ナサニエル・ホーソン)
AMERICAN SHORT STORIES
「アメリカの声」が,特別英語によるアメリカの短編小説をお送りします.
原作者はアメリカの作家ナサニエル・ホーソンですが,きょうは特別英語でお送りします.
『フェザートップ』は魔女-つまり魔法の力を持った女性-によって人間に変えられたかかしの物語です.
かかしのフェザートップは美しい少女と出会って恋に陥り,本物の人間になりたいと思うまでは幸せでした.ところが,本物の人間になることはできなくて,もとのかかしにもどります.
では,ルー・ローランドが『フェザートップの物語』をお伝えします.
初めのうちは夜の寒さが少しずつ和らいでいきましたが,急に暖かい春の日がやってきました.
地中に新しい生命が再びみなぎり,何もかもが成長して顔を出し始めました.
最初にとうもろこしの緑の芽が見えてきました-土を突き抜けて顔をのぞかせた芽が,今では地面の上に見えるようになりました.
長い冬の何か月かが過ぎると,からす-つまり,あの大きな黒い鳥たちはおなかがすいていましたので,
この小さな緑の芽を見かけると,舞い降りてきては食べるのでした.
リグピーばあさんは,このやかましいおなかのすいた鳥たちを追い払おうとしました.
この鳥たちは,おばあさんをすっかり怒らせてしまったのです.
彼女は,黒い鳥たちに自分のとうもろこしを食べられたくはないのです.
彼女はとうもろこしが大きくなったら,自分で食べるつもりだったからです.
ところが,鳥たちはどうしても逃げていかないのです.そこで,ある朝早く-太陽が昇り始めるころ,リグピーばあさんはベッドから飛び出しました.
彼女は,あの黒い鳥たちに,自分のとうもろこしを食べさせないようにする方法を考えついたのです.
リグピーばあさんは魔女-つまり,不思議な力を持った女性ですから,なんでもできるのです.
彼女は水を丘の下から上へ向けて流すこともできますし,美しい女性を白い馬に変えることもできるのです.
よく満月が明るく輝いている夜などには,長い木の棒にまたがって,村の家家の屋根の上を飛んでいく彼女の姿を見ることができます.
その棒というのはほうきの柄のことなんですが,彼女はこの棒があるからこそ,あらゆる種類の魔術を行うことができるのです.
リグピーばあさんは大急ぎで朝食をすませると,このほうきの柄で仕事にとりかかりました.
彼女は,人間の姿に似た物を作るつもりだったのです.
これを作れば,鳥たちは恐れをなして彼女のとうもろこしを食べなくなるでしょう.これは,大抵の農夫がこのやっかいな黒い鳥の害を防ぐ方法です.
彼女は魔法のほうきの柄をまっすぐに立てて持ち,それにもう一本の木切れを横にして結びつけました.これで早くも両腕のある人間の姿に似てきました.
それから彼女は頭をこしらえました.かぼちゃ-フットボールくらいの大きさの野菜の一種ですが,これをほうきの柄の先に取り付けたのです.
彼女はかぼちゃに穴を2つあけて目を作り,少し下のほうに,もう一つ口のように見える穴をくり抜きました.
彼はもういつでも,リグピーばあさんのために仕事に出かけていって,あの黒い鳥たちに,リグピーばあさんのとうもろこしを食べさせないようにする準備が整いました.
しかし,リグピーばあさんは自分が作ったものに満足できません.
彼女はいい仕事をする腕を持っていましたので,もっともっとりっばに見えるかかしを作りたいと思いました.
彼女は紫色のコートを作ってかかしに着せ,白い絹のストッキングをはかせました.
彼女はかかしの頭をにせの髪と古い帽子で覆い,その帽子に鳥の羽をくっつけました,
彼女はかかしをつくづくとながめていましたが,こうして美しいコートを着て帽子にりっぱな羽をつけたかかしがすっかり気に入り,
彼女はフェザートップをながめていると,楽しくなって笑い出しました.
彼女は,フェザートップがかかしにしてはできすぎているように思えたのです.
「彼には,からすを脅かすために夏中ずっととうもろこしのそばに立っているよりも,もっとましなことができるわ」彼女は思いました.
彼女は,フェザートップにもう一つ何かしてやることにしました.
彼女は自分が吸っていたたばこのパイプを取って,フェザートップの口にくわえさせました.
「吹かすのよ,ねえ,吹かしてごらんなさい」彼女はフェザートップに言いました.
「さあ,おりこうさんだから,ぷかぷかと吹かすのよ.
初めのうちは,ほんのわずかの煙でしたが,フェザートップが一生懸命吹いたり,吹かしたりしたので,だんだん多くの煙が彼の口から出てきました.
「どんどん吹かしてちょうだい,私のかわいい坊や」リグピーばあさんはすっかりうれしくなって言いました.
「さあ,だいじな坊や,ぷかぷかやってごらん.いいかい,吹かすのよ.おまえの命なんだから」
Reproduced by the courtesy of the Voice of America