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The Fall of the House of Usher Part Three(2) アッシャー家の崩壊


The Fall of the House of Usher Part Three アッシャー家の崩壊
EDGAR ALLAN POE: STORYTELLER. エドガー・アラン・ポー物語シリーズ
私が取り上げた古い書物は,愚者のために愚者が書いたような書物で,実はアッシャーの好きな書物ではなかった.
しかし,それが手近にあった唯一の書物だったのである.
彼は静かに聞いているようだった.
やがて物語は,酒の勢いに乗った力持ちの男がとびらを破り始め,乾いた木の割れる音が彼の回りの森中に響きわたるところまできた.
ここで私は読むのをやめた.というのは,この館のどこかずっと遠いところから,私が読んでいたのと同じような物音が私の耳に聞こえてきたような気がしたからである.
私がこのような物音に気をとめたのは,ただ類似点があったからにすぎない.なぜならば,このような物音自体は,ますます激しくなるあらしの中では取り立てて言うほどのものではないし,そのために読むのをやめたり,特に興味を覚えるほどのものではなかった.
私は物語を続け,今度はこの男が破ったとびらをくぐり抜けて中に入り,こういった古い物語によく出てくる,不思議な恐ろしい怪物を発見するところを読んだ.
その男が怪物を打つと,怪物は大きな叫び声をあげて倒れるのであるが,あまりの叫び声に,男は両手で耳をふさがなくてはならなくなるのである.
ここで私はまたしても読むのをやめた.
今度は,何の疑う余地もなかった.
この物語の怪物の叫び声とそっくりの物音を,私は確かにこの耳で聞いたのだ.
私が感じたことを友人に見破られまいとして,私は自分の高ぶる気持ちを抑えようと努めた.
友人の様子がどことなく変わっていたことは確かであるが,彼がその物音を聞いたかどうかは,私にはわからなかった.
彼は私に顔を見られまいとして,少しずついすを動かしておいたのである.
しかし,私には彼が独り言を言っているかのように,くちびるを動かしているのが見えた.
彼はうなだれていたが,眠っているのでないことはわかった.なぜならば,両目は開いていたし,からだを左右に揺すっていたからである.
私は再び読み始めた.まもなく物語は,重い鉄の塊が大音響とともに石の床の上に落ちるところへきた.
この部分を読み上げるや否や,遠くのほうではあるが,はっきりと大音響が聞こえたのである.それはまるで,鉄の何かが石の床の上にどしんと落ちたか,あるいは鉄のとびらが閉まったような音だった.
私はすっかりろうばいし,いすから飛び上がった.
アッシャーは座ったままで,わずかにからだを左右に動かしていた.
彼は視線を床の上に落とした.
私は彼のいすに駆け寄った.
彼の肩に手をかけると,彼の全身が震えていることがわかった.くちびるには病的な微笑が漂っていた.まるで,私がそこにいることも気づいていないかのように,彼は低く早口にいらいらとした声で話した.
「そうなんだ」彼は言った.
「ぼくには聞こえたんだ.
何分も,何時間も,何日も前からぼくには聞こえていたんだ、、それなのにぼくには言えなかったんだ.
ぼくたちは,彼女を生きたまま穴蔵へ納めてしまったんだ.
ぼくの感覚が恐ろしく鋭敏なことは,前にも言っただろう.
ぼくは彼女が最初に動いたのが,何日も前に聞こえたんだ、、それなのにぼくには言えなかったんだ.
ところが,あの物語が、、でも,あの音は彼女の音だったんだ.
ああ,ぼくはどこへ逃げたらいいんだ.
彼女はここへやってくる、、ぼくがなぜ早まって彼女をあそこに納めたのか,やってきてたずねるんだ.
階段を上がってくる彼女の足音が聞こえる.
彼女の心臓の重苦しい動悸が聞こえてきたぞ」
こう言うと,彼は飛び上がり,全身全霊をこめて言った.「いいかい,彼女はもうとびらの外に立っているんだぞ」
彼が指さしていた,巨大なとびらが静かに開いた.
それはたぶん疾風の仕業だった、、いや,しかし,とびらの外には幽霊が立っていた、、そこには,きょうかたびらをまとったアッシャー家のレディー・マデリンの背の高い姿が立っていたのである.
彼女の白衣には血がついていたし,彼女のやせ衰えたからだには至る所に,脱出しようとして必死にもがいたあとが残っていた.
彼女はちょっとの間,入口のところで震えていたが,やがて低いうめき声とともに部屋の中へ,兄のほうへ倒れかかった.断末魔の苦しみにもだえながら,兄もろとも床の上に倒れた.
彼も,自らの恐怖のために,息絶えたのであった.
私はその部屋から,そしてその館から大急ぎで逃げ出した.私は走った.
橋を渡る時も,あらしは私の回りに怒り狂っていた.
突然,足元で異様な光が動いたので,一体そのような明かりがどこから来るのかを見ようと思って,振り返った、、というのは,背後にはあの大きな家と暗やみ以外,何もなかったからである.
その明かりは,血のようにまっ赤な色をした満月の明かりだった.その光は,私が初めてこの大邸宅を見た時に見かけたように記憶する,前面の壁のひび割れのすき間からもれていたのだった.
初めはほんのわずかのひび割れだったが,じっと見ているうちに開いていったのである.
一陣の疾風が私の頭上に舞ったかと思うと,月がすっかり顔を現した.
私は巨大な壁が崩れ落ちるのを見た.
長い荒れ狂う叫び声のような音が起こり,やがて深く黒ずんだ湖は,アッシャー家のすべての形見を陰うつに飲み込んでしまった.
お送りしましたのは,エドガー・アラン・ポオの『アッシャー家の崩壊』の第3部-最終回でした.
この物語は「やさしい英語」で読んだものです.朗読はダリル・クロックストンです.
制作者はフィリップ・ターナーでした.
この物語は,特にアメリカの口語英語の理解に役立つように書いて朗読したものです.
また,これらの朗読は英語を話すのにも役立つことでしょう.
「やさしい英語」で聞けるポオの小説には,このほかに,次のようなものが用意されています.『アモンティラードーの樽(たる)』『モルグ街の殺人事件』『赤死病の仮面』『おしゃべりな心臓』『ウィリアム・ウィルソンの物語』などです.
 
Reproduced by the courtesy of the Voice of America
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