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The Fall of the House of Usher Part Three(1) アッシャー家の崩壊


The Fall of the House of Usher Part Three アッシャー家の崩壊
EDGAR ALLAN POE: STORYTELLER. エドガー・アラン・ポー物語シリーズ
100年余り昔のアメリカの作家,エドガー・アラン・ポオが書いた短編の一つを,「やさしい英語」の朗読でお送りします.
これらの物語は,特にアメリカの口語英語の理解に役立つように書いてあります.
また,これらは英語を話すのにも役立つことでしょう.
きょうは,ポオが書いた『アッシャー家の崩壊』という小説の第3部─最終回を聞いていただきましょう.アッシャー家の最後の1人である,ロデリック・アッシャーの異様な死についての物語です.
私は旧友のロデリック・アッシャーの古い石造りの家に,彼を訪れていた.そこは彼の大邸宅であるが,辺りの空間には死の感触が漂っていた.
私は,彼の心が恐怖のためにひどく苦しめられていることを知った.
彼のただ一人の妹レディー・マデリンが死んだので,私たちは2人で彼女の遺体を安置所に納めたのであるが,その安置所というのは,この館の冷たい壁の内部にある部屋-つまり,じめじめとした暗い穴蔵の中のことで,それはもうとても恐ろしい場所だった.
2人で彼女の死に顔をのぞき込んだ時,この兄と妹が驚くほど似ていることに気づいた.
「そのはずだとも」アッシャーは言った.「ぼくたちは同じ日に生まれたんだから,今までずっと2人の間には強いきずながあったのさ」
私たちは,彼女の顔を長くはながめていなかった。というのは,私たちは恐怖と奇異の念に襲われたのである.
彼女の顔はまだわずかながら血色が残っていて,口元は笑みを浮かべているようだった.
私たちは重い鉄のとびらを閉めて上の部屋へもどったが,そこも陰うつさにかけては,穴蔵と大差はなかった.
さて,今度は友人の心の病に,新たな症状が現れた.
彼は部屋から部屋へと足早に歩き回った.
彼の顔色はいやがうえにも血色を失い,一段とすごみを増して、目の輝きはすっかり消え失せた。
震える声は極度の恐怖を物語っているようであった.
時折彼は何時間もの間,まるで私には聞こえない音に耳を傾けているかのように,じっと空を見つめて座っていることがあった.
私は彼のこのような状態が,徐々にではあるが,間違いなく私に影響を与えているのを感じた.私には,彼の妄想が私の頭の中に植えつけられていくように思えた.
私がこのような感化を一番強く感じたのは,レディー・マデリンを穴蔵に納めてから7日目か8日目の夜遅く,床につこうとしていた時のことであった.
私は何時間たっても眠気を感じなかった.
私は心のいらだちを抑えようとして必死になった.
私は自分が感じていることの、すべてとまでは言わないが、多くはこの陰気な部屋や,吹き上げる風のために壁の上で揺れている黒ずんだ壁掛けのせいだ,と思い込もうとした.
しかしこんな努力はむだだった.
抑えようのない戦りつがからだ中に広がり,わけのわからない恐怖が私の心を捕らえて離さなかった.
私は身を起こして,部屋の暗やみの中をじっと見つめ,耳をそば立てて、、なぜそんなことをしたのか,私にもわからないのであるが、、あらしの絶え間に聞こえてくる,低い物音に耳を傾けた.
私は恐怖の念に圧倒された。
私は着物を着ると部屋中をいらいらと歩き回り始めた.
ほんのしばらく歩いた時,軽い足音が私の部屋のドアのほうへ近づいてくるのが聞こえた.
私には,それがアッシャーの足音であることがわかった.
まもなくドアのところで彼に会った.彼はいつものようにたいへん青白かったが,目には狂気じみた笑いが漂っていた.
それでも,私はひとりぼっちよりも彼と一緒にいるほうがうれしかった.
「すると,きみはまだあれを見ていないんだね」と彼は言った.
彼は大急ぎで窓の一つへ行き,窓をあらしに向かって開いた.
吹き込んだ風の力で,私たちはからだが床から浮き上がりそうになった.
その夜は確かにあらしではあったが,美しく不思議な夜だった.
重くのしかかるような雲が,この家を圧するかのように低く垂れこめ,四方八方から互いにぶつかりあいながら飛んできたが,またしてももどってきて,決して遠くへ飛び去ることはなかった.
厚い雲のために,月も星も光をさえぎられていた.
それなのに,私たちに雲が見えたのは,暗い湖面からも家の石からも立ちこめていた空気が-私たちは確かに見たのであるが-下方から雲を照らしていたからである.
「だめだ,見ちゃいけない」
私は,アッシャーを窓からいすのほうへ連れていきながら言った.
「きみはたいへん驚いているようだが,こんな現象はほかでも見られるんだよ.
湖水に原因があるのかもしれない.
さあ,空気が冷たいからこの窓を閉めよう.
ここにきみの好きな物語があるよ.
ぼくが読むから,きみは聞くんだ.こうして,この恐ろしい夜を一緒に過ごすことにしよう」
 
Reproduced by the courtesy of the Voice of America
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