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The Fall of the House of Usher Part Two(2) アッシャー家の崩壊


The Fall of the House of Usher Part Two アッシャー家の崩壊
EDGAR ALLAN POE: STORYTELLER. エドガー・アラン・ポー物語シリーズ
彼が歌っていた歌の一つに,『魔の宮殿』というのがあるが,その歌詞を私は容易に覚えてしまった.
私はこの歌を聞いて,初めてアッシャーが自らの理性が衰えていくことをよく承知していたことを知ったような気がした.
この詩は,王の住み家であった大きな家-すなわち宮殿を歌ったものである.その宮殿は緑の渓(けい)谷に建てられており,その谷間はすべてが光と色彩と美しさで覆われ,新鮮な空気で満たされていた.
宮殿には2つの明るい窓があって,この幸多き谷間では,これらの窓越しに音楽を聞き,王の回りを笑みを浮かべた精霊が舞っているのを見ることができた.
宮殿のとびらは紅白の粋を集めて作ったもので,そこからは別の精霊が現れたが,彼らのただ一つの役目は,美しい声で王の知性の高さを歌いあげることであった.
ところが,この詩はやがて暗い方向へ転換した.今度は,この谷に足を踏み入れる人の目に,赤い明かりの窓越しに映るものは,調子外れの音楽に合わせて動く精霊のおぼろげな姿だった.そして,今では色を失ったとびらから,笑い声はするがほほえみを忘れた,ぞっとするような精霊の行列が,とめどもなく流れる川のように出ていくのであった.
この歌のことを話していると,アッシャーの心の中にある,もう一つの奇妙な考えに気づくのであった.
彼は草木にも感覚や思考力があると信じていたし,草木ばかりでなく石や水も同様だと考えていた.
彼は自分の家の灰色の石も,それらの石の上に生えている小さな植物も,朽ち果てていく木々も,すべて今日の自分という人間を形成するうえに,大きな影響力を持っていたのだと信じていた.
私たちが読んだ書物、それは長い年月の間,この病的な男の心を楽しませてきた書物なんだが,それらの書物は想像どおり,こういった気違いじみた性格のものだった.
アッシャーは,これらの書物を長時間座りこんで調べていた.
彼の一番大きな喜びは,どこかの忘れられた教会のために書かれた書物で,「死者の番」の話を書いた,非常に古い書物を読むことだった.
とうとうある晩のこと,彼は私にレディー・マデリンがもう生存していないことを告げた.
彼は彼女の遺体をしばらくの間,この建物の壁の内部に造られた,多くの地下の穴蔵の一つに納めておくつもりだと言った.
このことについて彼が述べた世俗的な理由は,私としては納得せざるを得ないように思われた.
彼がこのように決めたのは,次の理由によるものであった.すなわち,彼女の病気の性質が特異なものであったこと,医者が異常な興味をもってせん索するだろうということ,一家の墓地が遠く隔たったところにあったことなどであった.
初めてこの家へ来た時に出会った医者の顔を思い浮かべて,私は,友人は正しいかもしれないと思った.
私たちは2人で,彼女を安置所へ運んだ.
私たちが遺体を置いた穴蔵は,狭く暗いところで,昔は,さぞかし異様な血生臭い場面が繰り広げられた場所だったのだろう.
そこはこの建物の,私が寝ていた部分のはるか下のほうに当たっていた.
分厚いとびらは鉄でできていて,恐ろしく重たかったので,開閉のたびに大きな金属性の音がした.
この恐ろしい部屋にレディー・マデリンを安置しながら,私はこの兄と妹が驚くほど似ていることに,初めて気づいたのであるが,アッシャーの言うところによれば,彼らは双子で,同じ日に生まれたというのである.
そのために,互いに相手のことがよくわかっており,2人の間にはきわめて強いきずながあったのである.
私たちは最後にもう一度死に顔をのぞいた.私は驚異の念を禁ずることができなかった.
そこに横たわっているレディー・マデリンは,触ると回りの石のように冷たかったけれども,一見死んでいるというよりは眠っているようで,まだ柔らかくて温かみが残っているように見えた.
お送りしましたのは,エドガー・アラン・ポオの小説『アッシャー家の崩壊』の第2部でした.
この物語は「やさしい英語」で読んだものです.朗読はダリル・クロックストンです.
制作者はフィリップ・ターナーでした.
この物語は,特にアメリカの口語英語の理解に役立つように書いて朗読したものです.
また,これらの朗読は英語を話すのにも役立つことでしょう.
「やさしい英語」で聞けるポオの小説には,このほかに,次のようなものが用意されています.『アモンティラードーの樽(たる)』『モルグ街の殺人事件』『赤死病の仮面』『おしゃべりな心臓』『ウィリアム・ウィルソンの物語』などです.
では,次回は,『アッシャー家の崩壊』第3部をお送りします.お聞き逃しのないよう.
 
Reproduced by the courtesy of the Voice of America
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