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Episode-2 An Occurrence at Owl Creek Bridge.(2) アウルクリーク橋の出来事


Episode-2 An Occurrence at Owl Creek Bridge. (Ambrose Bierce) アウルクリーク橋の出来事(アンプローズ・ビアース)
AMERICAN SHORT STORIES
そして,これらの感覚は今までよりも鋭くなっていました.
彼にはそれまでに聞いたこともないような音-人間の耳には聞こえたことのない音-が聞こえてきました.例えば,小さな虫が飛んでいる時の羽の音とか,魚の動く音などが聞こえるのです.
彼の目には,川沿いの木だけでなく,
木の葉の一枚一枚が見え,細い葉脈まで見えるのです.
それから,一方の端がへいになっている橋も見えるのです.
橋の上にいる兵士や隊長も目に入りました.
彼らは大声を張り上げて,捕虜を指さしています.
彼の目には,まるで巨大な怪物のように映るのです.
彼が目をやると,とたんに銃声が聞こえてきました.
彼の頭の近くで何かが水に当たりました.
つづいて2発目です.
彼は,1人の兵士が自分をねらって撃っているのが目に入りました.
森のあるところまで行って逃げなくてはいけない,ということは彼は百も承知していました.
1人の将校がほかの兵士たちに「撃て!」と命じる声が,捕虜の耳に達しました.
捕虜は,できるだけ深く川底へ潜りました.
水の音が彼の耳に大きく聞こえていましたが,それでも銃声が彼の耳に届きました.
再び水面に浮き上がると,銃弾が水をたたくのが見えました.
なかには彼の顔や手をかすめる弾もありました.
一つの弾などは,彼のシャツの首から中へ入ったりしました.
彼は弾のぬくもりを背中に感じました.
空気を吸い込むために水面に顔をもたげてみると,彼は兵士たちからだいぶ離れたところまで来ていることに気づきました.
彼は全力で泳ぎ始めました.
彼が泳いでいくと,兵士たちはライフル銃を発射しました.
兵士たちはさらに大砲を発射しましたが,
何ひとつとして捕虜には当たりません.
そのうち,彼は急に泳げなくなりました.
彼はうず巻きに身を取られてぐるぐると回っていたのです.
もうこれでおしまいだ,と彼は思いました.
すると,うずに落ち込んだ時と同じように,急にうず巻きに持ち上げられ川の外へほうり出されました.
彼は地上の人となりました. 
彼は地面に口づけしました.
彼は辺りを見回しました.
大気はバラ色に染まって見え,
木々を吹き渡る風は,あたかも音楽を奏でているように感じられるのです.
彼はそこにいたいと思いましたが,
またもや大砲が鳴り響き,
頭上を銃弾の飛ぶ音が聞こえました.
彼は立ち上がって森の中へ逃げ込みました.
やっとのことで,我が家に通じている道が見つかりました.
それは幅の広いまっすぐの道でした.
しかし,その道はだれも通ったことのない道のように見えました.両側には農場もなければ家もなく,ただあるのは亭々とそびえる黒い木々だけでした.
そびえ立つ黒い木々の中から,聞き慣れない声が捕虜の耳に聞こえてきました.
これらの声の中には,彼には,なんのことかわからないようなことばで話しているものもありました.
彼は首が痛み始めました.
首に手をやってみると,首がとても大きく感じるのです.
それに,目は痛くて閉じることができませんでした.
足は動いているものの,道を歩いているという感触はないのです.
彼は歩きながら眠ったようでした.
やがて彼は半分覚めたような半分眠ったような状態で,ふと気がつくと我が家の戸口にいるのです.
彼のやさしい妻が彼のところへかけ寄ります.
ああ,やっとのことで!
彼は美しい妻を抱きしめました.
ちょうどその時のことです.彼は首の後ろにひどい痛みを感じたのです.
彼の回りは強烈な白い光で満たされ,大砲の音が響き渡っていました.
やがて訪れたのは暗黒と静寂でした.
捕虜は死んだのです.首が折れて.
彼の死体はロープの端につるされたまま,
アウルクリーク橋の穴の下で左右にゆるやかに揺れていました.
アメリカの短編小説を,特別英語でお送りしました.
ただ今の物語の題名は『アウルクリーク橋の出来事』でした.
原作者はアンプローズ・ビアースです.
語り手はジャック・モイルズでした.
「アメリカの声」では来週も同じ時間に,特別英語によるアメリカの短編小説をお送りします.どうぞお聞きください.
 
Reproduced by the courtesy of the Voice of America
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