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Episode-3 The Legend of Sleepy Hollow(1) スリーピー・ホローの伝説
Episode-3 The Legend of Sleepy Hollow (Washington Irving) スリーピー・ホローの伝説(ワシントン・アービング)
AMERICAN SHORT STORIES
「アメリカの声」が,特別英語によるアメリカの短編小説をお送りします.
きょうはスリーピー・ホローという谷にまつわる物語です.
原作者は,アメリカが生んだ最初の小説家と言われているワシントン・アービングです.
小説の題名は『スリーピー・ホローの伝説』です.レット・ターナーが特別英語でお送りします.
スリーピー・ホローという名で知られている谷は,ニューヨーク州の高い丘に囲まれていて,外からは見えないところにあります.
谷に沿って流れる小さな川の水は清らかで,聞こえるものといえば,丘にあるねぐらに帰ろうとして,道に迷った鳥の声くらいのものでした.
この静かな谷にまつわる言い伝えは数多くありましたが,人々が一番確かだと信じていた話は,夜馬に乗って通る男の話でした.
その言い伝えによると,その男というのは,昔,アメリカの独立戦争のころに死んだというのです.
毎晩墓場から出て自分の馬にうち乗り,失った頭を捜し求めて谷を駆け抜けるのです.
スリーピー・ホローの近くに,タリー・タウンという村があります.
この村には小さな学校が1つと,イカパッド・クレーンという名の先生が1人いました.
イカパッド・クレーンという名前は,彼には打ってつけの名前でした.なぜかというと,彼はつる(クレーン)に似ていたからです.
彼の小さな肩からは,ひょろ長い腕が垂れ下がっていました.
彼は大きな耳をしていて,目はどんよりとした緑色で,長い鼻をしていました.
イカバッドは,教師の収入だけでは足りませんでした.
彼は確かに背が高くてやせてはいましたが,太った人のようにたくさん食べるのです.
彼は食費の足しにするために,若い人たちに歌を教えて,ほかからの収入を得ていました.
彼は毎週日曜日になると,礼拝のあとで歌を教えていたのです.
イカバッドが教えていた女性の中に,カトリーナ・バン・タッセルという人がいました.
彼女は,裕福なオランダ人の農場主のひとり娘でした.
彼女はまん丸くて,ほんのり赤らんだりんごのような顔をした,年ごろの娘でした.
イカバッドは女性にすぐにほれこむたちでしたので,たちまちバン・タッセル嬢に関心を寄せるようになりました.
カトリーナの農場の豊かさを見たイカバッドは,目を見張りました.そこには,何マイルも続くりんご園や小麦の畑があり,よく太った家畜が何百頭もいたのです.
彼は自分がカトリーナを妻として,このバン・タッセル農場の主人になった時のことを頭に描きました.
しかし,カトリーナの愛をかちえるためには,多くの障害が横たわっていました.
障害の一つは,プロム・バン・プラントというがんじょうな若者でした.
そのころ,プロムは若い女性のあこがれの的だったのです.
彼は肩が張っていて背中が大きく,髪の毛は短くカールしていました.
彼はいつもタリー・タウンの競馬では優勝して,多くの賞を獲得していました.
時折夜遅くプロムは仲間と一緒に,馬に乗って大声を張り上げながら,町を駆け抜けたりしました.
眠りを妨げられた老婆(ぱ)たちは愛想をつかして,こう言ったものです.「ああ,またプロム・バン・プラントが,荒武者たちの一団を率いて行くんだわ」
イカバッドがカトリーナの愛をかちえるために負かさなければならない競争相手は,このような男だったのです.
イカバッドよりも強くてりこうな人間でさえも,あえて挑戦しなかったでしょうが,イカバッドには計画がありました.
彼は競争相手とおおっぴらに戦いを交えるわけにはいきませんので,黙って秘かに争ったのです.
彼はたびたびカトリーナの農場を訪れ,彼女に,おかげで歌がうまく歌えるようになった,というように思い込ませました.
時が過ぎて,町の人々はイカバッドのほうが有利だと思うようになりました.
もう日曜日の夜に,カトリーナの家でプロムの馬を見かけることもなくなりました.
ある秋の日に,イカバッドはバン・タッセルの家で催される大きなパーティーに招かれました.
彼はいっちょうらの服を着こんで行きました.ある農夫がパーティーに行くのに長い道のりを馬で行くようにと,年老いた馬を貸してくれました.
家の中は農夫たちとその妻や,赤ら顔の娘たちや汚れをすっかり落としてきた息子たちでいっぱいでした.
テーブルの上には,いろんなごちそうがあふれるばかりに並んでいますし,多くのグラスにはワインがついでありました.
プロム・バン・プラントは,彼のデアデビル(向こう見ず)という名の一番足の速い馬に乗ってパーティーに現れました.
若い女性は彼を見かけると,みんなにっこりとほほえみました.
まもなく部屋中に音楽が鳴り響き,みんな踊ったり歌ったりし始めました.
イカバッドは嫉妬(しっと)の眼で見るプロムをしり目に,カトリーナと楽しくダンスをしました.
夜が更けて音楽がやむと,若者たちは独立戦争にまつわる言い伝えを語り合いました.
物語は,すぐにスリーピー・ホローにまつわるいろんな言い伝えの話になりました.
なかでも一番恐ろしいのは,失った頭を馬に乗って捜しにいく男の話でした.
ある農夫が,馬に乗った頭のない男と競争した時の模様を話しました.
その農夫は,自分の馬を速く速く走らせましたが,その馬に乗った男は石の多い茂みを越えて,谷の一番奥まで追ってきました‥
そこに残っていたのは,月の光に照らされて光って見える男の白骨だけでした.
Reproduced by the courtesy of the Voice of America