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LITTLE WOMEN 若草物語 14-1

Chapter Fourteen Secrets 秘密 1

Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
 十月にはいると、寒さもきびしくなり、日ざしもみじかくなったので、ジョウは屋根部屋でいそがしい日を送りました。
最後のページをおわって、じぶんの名を花文字で書くと、ペンをなげ出していいました。
「さあ、できあがった、これでだめなら、もっとよく書けるまで待たなくてはならない。」
 ソファにころりとあおむきになり、ジョウは念入りに原稿を読みなおし、ところどころに、線をひいたり、感嘆符をつけたりしました。
この屋根部屋のジョウの机は、かべにとりつけてある古いブリキの台所用のたなでした。
ジョウは、そのなかへ原稿用紙や二三冊の本をしまいこんで、ねずみの、がりがりさんに、荒らされないようにしました。がりがりさんは、やっぱり文学好きで、原稿用紙や本をよくかじるからです。
ジョウは、ブリキのいれものからもう一つの原稿をとり出し、今書きおわった原稿といっしょに、ポケットにねじこんで階段をおりました。
それから、こっそり家を出て、通りがかりの乗合馬車をよびとめてのり、いかにもたのしそうな、秘密ありそうな顔つきで、町のほうへいきました。
やっとある家をさがし出しましたが、そのきたない階段を見あげると、じっと立ちどまっていましたが、きゅうに、また大いそぎで帰っていきました。
 それを見ていたのは、むかいがわの建物の、窓のところをぶらぶらしていたわかい紳士でした。
こんなことを二三回くりかえしたあげく、まるで歯をすっかりぬいてもらうような悲壮な顔つきで階段をのぼっていきました。
 十分とたたないうちに、ジョウはまっかな顔をして、なにかおどろくほど苦しい目にあったように階段をかけおりて来ました。
わかい紳士は、ほかならぬローリイでしたが、ジョウがちょいと頭をさげていきすぎたので、
すぐに後をおって尋ねました。「とても痛かった?」
「そんなでもなかったわ。」
「早くすんだねえ。ずいぶん。」
「ええ、うまくいったわ!」
「どうして一人でいったの?」
「たれにも知らせたくなかったからよ。」
「ずいぶん、かわっているんだね。
きみは、それで、なん本ぬいたの?」
 ジョウは、ローリイのいう意味がわからないのでかれの顔をながめましたが、はっと気がついて、おもしろくてたまらないというように笑いました。
「二本ぬいてもらいたいんだけど、一週間も待たなきゃならないのよ。」
「なにを笑ってるの? また、なにかいたずらしてきたんだね、ジョウ。」
「あんなこそ、玉突屋でなにしてらしたの?」
「はばかりながら、玉突屋ではありません。体育館でして。ぼくは剣術を習ってます。」
「まあ、うれしい!」
「なぜ?」
「あたし教えてもらえるもの。そうすれば、今度ハムレットをやるとき、あんなレアティスやれるから、二人であのすばらしい剣術の場がやれる。」
 ローリイがふき出したので、通行人が、二三人ふりかえりました。
「教えてあげるよ、ハムレットはどうでもいいが、
おもしろいよ。やれば身体がしゃんとなる。
でもそれだけで、あなたが、まあうれしいって、あんなに強くいったとは思えないが。」
「そうよ、あんたが玉突屋にいなかったのがうれしかったの。あんた、いくの?」
「そんなに、いきませんよ。」
「いかないほうがいいわ。」
「なにもわるいことありませんよ
。家の玉突では、じょうずな相手がなくてつまらない。だから、ときどきいって、ネッド・マフォットや、そのほかの連中とやるんです。」
「いやだわ、だんだん好きになって、時間をお金をむだにして、いけない子になるんでしょう。
「男は、品をおとさなければ、ときどきおもしろい遊びをしてはいけないかしら?」
「それは遊ぶ方法と場処によるわ。
ネッドの連中、あたしきらい、交際しないほうがいいわ。
あたしの家にも来たがっているけど、おかあさんよせつけないようになさるの。
あなたが、あの人みたいなら、今までどおりあなたと遊ばせないでしょう。おかあさんは。」 
 
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani
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