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The Gift of the Magi 3 賢者の贈り物3


O.Henry
AOZORA BUNKO 青空文庫
デラが家に着いたとき、興奮はやや醒め、分別と理性が頭をもたげてきました。
ヘアアイロンを取り出し、ガスを着けると、 愛に気前の良さを加えて生じた被害の跡を修繕する作業にかかりました。
そういうのはいつも大変な仕事なのですよ、ねえあなた ―― とてつもなく大きな仕事なのですよ。
40分のうちに、デラの髪は小さく集まったカールで覆われました。 髪型のせいで、まるで、ずる休みした学童みたいに見えました。
デラは、鏡にうつる自分の姿を、長い間、注意深く、ためつすがめつ見つめました。
「わたしのことを殺しはしないだろうけれど」とデラは独り言をいいました。 「ジムはわたしのことを見るなり、 コニーアイランドのコーラスガールみたいだって言うわ。
でもわたしに何ができるの ―― ああ、 ほんとうに1ドル87セントで何ができるっていうの?」
7時にはコーヒーの用意ができ、 フライパンはストーブの上にのり、 チョップを焼く準備ができました。
ジムは決して遅れることはありませんでした。
デラは時計の鎖を手の中で二重に巻き、 彼がいつも入ってくるドアの近くのテーブルの隅に座りました。
やがて、ジムがはじめの階段を上ってくる足音が聞こえると、デラは一瞬顔が青ざめました。
デラは毎日のちょっとしたことでも小さな祈りを静かに唱える習慣がありましたが、 このときは「神さま。 どうかジムがわたしのことを今でもかわいいと思ってくれますように」とささやきました。
ドアが開き、ジムが入り、ドアを閉めました。
ジムはやせていて、生真面目な顔つきをしていました。
かわいそうに、まだ22歳なのに ―― 彼は家庭を背負っているのです。
新しいオーバーも必要だし、手袋もしていませんでした。
ジムは、ドアの内で立ち止まりました。 うずらの匂いにじっとしている猟犬と同じように、そのまま動きませんでした。
ジムの目はデラに釘付けでした。 そしてその目には読み取ることのできない感情が込められていて、 デラは恐くなってしまいました。
それは憤怒ではなく、驚嘆でもなく、拒否でもなく、恐怖でもなく、 デラが心していたどんな感情でもありませんでした。
ジムは顔にその奇妙な表情を浮かべながら、 ただ、じっとデラを見つめていたのです。
デラはテーブルを回ってジムの方へ歩み寄りました。
「ジム、ねえ、あなた」デラは声をあげました。 「そんな顔して見ないで。
髪の毛は切って、売っちゃったの。 だって、あなたにプレゼント一つあげずにクリスマスを過ごすなんて絶対できないんだもの。
髪はまた伸びるわ ―― 気にしない、でしょ? 
こうしなきゃ駄目だったの。
ほら、わたしの髪ってすごく早く伸びるし。
『メリー・クリスマス』って言ってよ、ジム。 そして楽しく過ごしましょ。
どんなに素敵な ―― 綺麗で素敵なプレゼントをあなたに用意したか、 当てられないわよ」
「髪を切ったって?」とジムは苦労しつつ尋ねました。 まるで、懸命に頭を働かせても明白な事実にたどり着けないようなありさまでした。
「切って、売っちゃったの」とデラは言いました。
「それでも、わたしのこと、変わらずに好きでいてくれるわよね。
髪がなくても、わたしはわたし、よね?」
ジムは部屋をさがしものでもするかのように見まわしました。
「髪がなくなっちゃったって?」ジムは何だか馬鹿になったように言いました。
「探さなくてもいいのよ」とデラは言いました。
「売っちゃったの。だから、―― 売っちゃったからなくなったのよ。
ねえ、クリスマスイブでしょ。
優しくして。 髪がなくなったのは、あなたのためなのよ。
たぶん、わたしの髪の毛の一本一本まで神様には数えられているでしょうね」 デラは急に真面目になり、優しく続けました。 「でも、わたしがあなたをどれだけ愛しているかは、 誰にもはかることはできないわ。
チョップをかけてもいい、ジム?」
ジムはぼうっとした状態からはっと戻り、デラを抱きしめました。
 
Copyright (C) O.Henry, Hiroshi Yuki(結城 浩)
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