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The Story of William Wilson Part Two(1) ウィリアム・ウィルソンの物語


The Story of William Wilson Part Two ウィリアム・ウィルソンの物語
EDGAR ALLAN POE: STORYTELLER. エドガー・アラン・ポー物語シリーズ
100年余り昔のアメリカの作家、エドガー・アラン・ポオが書いた短編の一つを、「やさしい英語」の朗読でお送りします。
これらの物語は、特にアメリカの口語英語の理解に役立つように書いてあります。
きょうは、ポオが書いた『ウィリアム・ウィルソンの物語』という小説の第2回を聞いていただきましょう。
これは、1人の男が正邪の判断について自分自身と戦う物語・・・つまり、ある男の良心との戦いの物語です。
私はこの物語の初めのところで、私が初めて上がった学校のこと、ほかの少年たちのこと、そして、彼らに対して私が確固たる支配力を持つに至ったことなどをお話した。
ところが1人だけ私の命令に従おうとせず、私の指図に対して、ほかの少年たちのように従おうとしなかった少年がいた。
彼の名前は、私と同じで、ウィリアム・ウィルソンといったが、私の家族とは何の関係もなかった。
彼は私に対していくらか好意を寄せているようであったが、学校に入ったのも私と同じ日だったのだ。
少年たちの多くは、私たちが兄弟だと思っていたのである。
私はほどなく、私たちは同じ日、つまり1809年の1月19日に生まれていることを知った。
ウィルソンは相変わらず私に対して命令しようとするし、一方、私のほうも相変わらず彼を自分の支配下に置こうとしていた。
不思議なことに、私は彼を好きになれなかったが、かといって、憎むこともできなかった。
事実、私たち2人は毎日のようにけんかをした。
表向きは、私のほうが強いことを示したように見えたが、彼のほうは、実はそうではなく強いのは自分のほうだということを何とかして私に感じさせるすべを心得ているようだった。
とはいうものの、2人は相変わらずいくらかは親しげにことばを交わしていた。
そして、ピッタリ意見の合う話題も多かった。
私は時折、もし2人が別の時に別の場所で知り合っていたら、仲よくなっていたかもしれないと思ったくらいである。
彼に対して私が内心どう思っていたかということを説明するのはむずかしい。
愛情もなければ恐怖もなかった。
私は彼の中に何か尊敬すべきものがあることを知っていたので、彼のことをもっと知りたいと思っていた。
人間の本性というものをよく知っている人なら、ウィルソンと私とがいつも一緒だったということまではお話しなくてもわかっていただけるだろう。
この奇妙な交友関係は、といっても私たちが友だちだったというわけではないが、当然のことながら2人のけんかのうえに奇妙な様相をもたらした。
私はほかの連中が彼のことをあざけり笑うように仕かけた。私は彼が陽気に遊んでいるように見える時には、彼に苦痛を与えようと努めたのである。
周到な計画にもかかわらず、私の努力はいつもうまくいくとは限らなかった。
彼は容易にあざけることのできない性格を多分に備えていたのである。
しかし、私にも一つだけ、彼の弱点を見つけることができた。
それはたぶん、彼が生まれつき持っていた弱点か、でなければ、何かの病気の結果生じた弱点だったのだろう。
彼のこんな弱点につけこもうなどと考えるのは私ぐらいのものだったにちがいない。
彼はごく小さな低い声でしか話すことができなかったのである。
私は自分の意のままになるこの弱点につけこむことを決して忘れなかった。
ウィルソンにだって報復手段がなかったわけではないし、事実、仕返しをしてきたのである。
彼の仕返しの方法の中で、ひとつだけ私を非常に困らせたのがあった。
私はもともと自分の名前を嫌っていたのである。
あまりにもありふれた名前だったので、私はもっと月並みでない名前が欲しかったのである。
ウィリアム・ウィルソンという名前を聞くたびに私は気分が悪くなった。
私がこの学校に来た日、もう一人のウィリアム・ウィルソンがやってきた時、私は彼がこの名前であるというだけの理由で彼に対して腹立たしさを覚えたのである。
私は毎日この名前を2倍も繰り返し聞く羽目に陥るのだ。
もう一人のウィリアム・ウィルソンに終始つきまとわれることになるだろう。
ほかの少年たちは、しばしば、私と彼の言動を取り違えたり、持ち物を混同したりするのだった。
ウィリアム・ウィルソンと私が、心身いずれにせよ、似ていることがわかるような出来事が起こるたびに、私の腹立たしさは募るばかりであった。
私はそのころは、まだ彼と私が同じ年だという驚くべき事実を発見していなかったが、背の高さが同じであることや、体つきや顔がよく似ていることには気づいていた。
精神的にせよ肉体的にせよそのほか何事にせよ、2人が似ているとだれかが話すのを聞くと、私の苦しみは絶頂に達した。もっとも、私はだれからもこのことを感づかれないように、細心の注意は怠らなかったつもりであるが。
しかし、実際は、2人が似ていることに学友たちが気づいていると私が信じなければならない理由は、どこにもなかったのだ。
彼が2人の類似を私同様はっきりと認めていることは、私にもよくわかっていた。
彼はこの類似を利用すれば私を苦しめる方法はいくらでもある、ということに気づいたのだ。
これは彼の並外れた洞察力を物語っていた。
 
Reproduced by the courtesy of the Voice of America
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