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The Story of William Wilson Part Two(2) ウィリアム・ウィルソンの物語


The Story of William Wilson Part Two ウィリアム・ウィルソンの物語
EDGAR ALLAN POE: STORYTELLER. エドガー・アラン・ポー物語シリーズ
2人の類似をますます強めるために彼がとった方法は、ことばと動作の両方面にわたっていて、彼は自分の立てた計画どおり忠実に実行した。
私と同じような服装をすることぐらいは何でもなかった。
彼は簡単に私と同じ歩き方をし、私と同じ身のこなし方ができるようになった。
彼は私のように大きな声は出せなかったが、話し振りは私とそっくりにまねていた。
この私の生き写しが私にとってどれほどやっかいなものだったか、ということについては今は説明しようとは思わない。
私の生き写しに気づいていた者は、私のほかにだれもいなかったようだった。
私だけがウィルソンの奇妙な、心得顔のほほえみを知っていたのである。
彼は私の心中に思ったとおりの結果を引き起こしたことに満足して、内心ひそかに笑っていたようだが、だれひとり自分と一緒に笑ってくれる者がいなくてもいっこうに気にとめなかった。
彼がどんなに私より立派で賢明であると思い込んでいるらしいか、ということについては前にもお話したとおりである。
彼は私を指導しようとした。彼は私が計画していたことをやらせまいとして妨害しようとすることがよくあった。
彼はよく私に、何を為すべきか、何を為すべきでないか、といったことを話して聞かせたが、彼はこれをあからさまには言わず、一言か二言ポツンと言ったので、私は真意をくみとらなくてはならなかった。
私は年をとるにつれて、彼の忠告に耳を傾けたくないという気持ちが強まっていった。
しかし、公平を欠いてはいけないので、ここで彼のために一言いっておこう。
彼の話は、私が記憶する限り、彼と同じ年ごろの人間の話にしてはいつも賢明だったのである。
彼は私などよりも善悪についての判断力が優れていた。
もっと彼の言うことを聞いておけば、私は今ごろ、より善良でより幸せな人間になっていたかもしれないと思うほどである。
当時、私は彼からいつも監視されていたために、不愉快な日を過ごしていた。
私はくる日もくる日も、彼の話はまっぴらごめんだということを、ますますあけすけに表明するようになった。
私たち2人が同時に学校に入ってからしばらくの間なら、私の気持ちは容易に友情に変わっていったかもしれない、ということは前にも話したとおりであるが、月日がたつにつれてそのころになると、彼は以前ほどにはしゃべらなくなってはいたが、私の気持ちは、むしろ憎悪に近くなっていった。
もし私の記憶に誤りがなければ、大体そのころのことだったと思うが、彼がたまたまいつもよりあけっぴろげに振る舞ったことがあり、私は彼の言動の中にたいへん興味をそそられる何かを発見したことがあった。
彼は私にどういうわけか、私のごく幼いころの様子を目のあたりに見るように思い出させたのである。私は思い出せるはずがないようなことを思い出したらしいのである。
このごく幼いころの光景というのは、はなはだとっぴで、薄明かりがさしていてぼんやりとしているのだが、それでも今目の前に立っているこの人と私ははるか昔からの知り合いにちがいないと直感したのだ。
しかし、この幻想はふと浮かんだかと思うと、たちまち消えてしまったのである。
私がこの奇妙な、もう一人のウィリアム・ウィルソンと学校で顔を合わすのは、この日が最後となった。
この日の夜、みんなが寝静まったころ、私はベッドを抜け出し、手に明かりを持って、忍び足で建物の中を通りウィルソンの部屋まで行った。
私はそれまで長い間、彼をいためつけるための新手を考えていたのだがどうもうまくいかなかったのだ。
だから今回の目的はこの新しいプランに従って行動を開始することにあったのだ。
彼の部屋まで行くと、明かりを部屋の外に置いて忍び込んだ。
私は一足踏み入れて耳をすました。
彼は寝込んでいた。
私は振り返って明かりを取り、もう一度ベッドのところへ行った。
そして、彼の顔をのぞき込んだ。
からだ中が氷のように冷たくなるのを覚えた。
ひざは震え、頭の中は恐怖でいっぱいだった。
私は明かりをもう少し彼の顔に近づけてみた。
これが一体、これがウィリアム・ウィルソンの顔だろうか。
もちろん、ウィリアム・ウィルソンの顔であることはわかっていたのにそうでないような気もして、私は病気の時のようにぶるぶると震えがきた。
私は彼の顔のどこを見てこんなに当惑したのだろう。
じっと見ているうちに次から次へといろんな考えが起こって、私の頭の中はぐるぐると渦巻いた。
こんな顔ではない・・・確かに昼間見る彼の顔はこんな顔ではない。
私と同じ名前で、同じからだつきをしているうえに、学校へ入ったのも同じ日ときている。
おまけに、彼のほうは私の歩き方やしゃべり方をまねるのだ。
実際問題として、いま目のあたりに見ているものが、私に似ようとする絶えざる努力の結果、そう単なる結果に過ぎないなどということが、果たして人間業として考えられるだろうか。
私は驚きと恐れの念に襲われ寒けがして震えながら明かりを消した。
私は静まりかえったやみの中を彼の部屋から出ていき、その足であの古い学校を立ち去ったがその後は二度と学校の中へ入ってはいない。
お送りしたのは、エドガー・アラン・ポオの『ウィリアム・ウィルソンの物語』の第2部でした。
この物語は「やさしい英語」で書いたものを、リチャード・バウアーが朗読したものです。
制作者はフィリップ・ターナーでした。
では、次回、『ウィリアム・ウィルソンの物語』第3部をお送りします。どうか、お聞き逃しなく。
 
Reproduced by the courtesy of the Voice of America
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