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Episode-9 The Boy Who Painted Cats(1) 猫の絵をかいた少年


Episode-9 The Boy Who Painted Cats (Lafcadio Hearn) 猫の絵をかいた少年 (ラフカディオ・ハーン)
AMERICAN SHORT STORIES
「アメリカの声」が,特別英語によるアメリカの短編小説をお送りします.
きょうの小説の題名は『猫(ねこ)の絵をかいた少年』です.
原作者はアメリカの作家ラフカディオ・ハーンです.
モリス・ジョイスが特別英語でお伝えします.
昔,日本の小さな村に貧しい農夫と妻が住んでいました.
2人ともとても善良な人たちでした.
2人はたいへんな子持ちでしたので,子どもたちに十分な食べ物を与えることは困難でした.
長男は14になると父の手伝いができるくらいにがんじょうになりましたし,
小さな女の子たちはやっと歩けるようになると,もう母親の手伝いをするのでした.
一番下の男の子は手がかかりました.
彼は父親の手伝いができるほど,からだがじょうぶではありませんでした.
しかし,彼はとてもりこうで物覚えがよかったのです.
彼は兄弟姉妹の中では,とびぬけていろんなことを知っていました.
しかし村の人たちは,この子はじょうぶにならないだろうし,これ以上からだも大きくならないだろうと言っていました.
このため彼の両親は,彼は農夫になるより,僧侶(りょ)になったほうがよいのではないかと考えました.
両親はこの小柄な男の子を,ある日村の寺に連れていき,そこの親切な老住職に,この子に僧侶の修業をさせてほしいと頼みました.
老住職はこの小柄な少年にやさしく話しかけて,いくつかのむずかしい質問をしました.
住職は少年の答えがたいへんりっばだったので,この男の子を仕込んであげようと言ってくれました.
少年は,老住職が教えることをすぐに覚えましたし,住職の言うことはなんでもよく聞いたのですが,
一つだけ住職に気に入られないことがありました.
少年は勉強の時間に猫の絵をかくのが好きで,
たびたび,かいてはいけないところに,猫の絵をかくのでした.
少年はひとりでいる時は,いつも猫の絵をかいていました.
彼は勉強の本のページの余白にかいたり,寺の壁にかいたり,寺の高く丸い礎石にかいたりしました.
住職は彼に,猫の絵をかいてはいけない,と何度か注意しました.
少年はいけないこととは知りつつも,猫の絵をかくことをやめることができません.
彼は生まれながらにして,いわゆる画家としての才能を持っていたのです.
だから,りっぱな僧侶になることはできないでしょう.
ある日のこと,何かの紙に少年が猫の絵をいくつもかいたので,住職が彼に言いました.「おまえはりっぱな住職にはなれないだろう.
だから,ただちに寺を出てもらおう.
たぶんおまえはりっぱな絵かきになるだろう.
おまえが寺を出る前に,一つだけ忠告をしてあげたいんだが,
このことは決して忘れてはならないぞ.
夜は広い場所にいてはいけない.狭い場所にいるんだよ」
少年には「夜は広い場所にいてはいけない.狭い場所にいるんだよ」という住職のことばの意味がのみこめませんでした.
彼は寺を去るために自分の衣類をまとめていましたが,その間中,何度も何度もこのことを考えていました.
しかし,彼はそのことばの意味がさっぱりわかりませんでした.
彼は,もうこれ以上住職と話をしてはいけないと思い,一言「さようなら」のあいさつだけ言い残して寺を去りましたが,
心の中は悲しみでいっぱいでした.
さて,どうしたものかと,少年は考えました.
このまま家へ帰れば,住職の言いつけを守らないで猫の絵をかいてばかりいたことを,父にしかられるにちがいないと思ったのです.
彼は寺をあとにして歩いていきながら,隣村に大きな寺があるのを思い出しました.
彼は,その寺にはお坊さんが大勢いることを聞いて知っていました.
彼は.その寺へ行き,そこで勉強をし僧侶になれないかどうか,たずねてみることにしました.
その寺はずっと以前から閉じたままになっていたのですが,少年はそのことを知らなかったのです.
この寺が閉じたままになっていたのは,たちの悪い化け物,悪霊が僧侶たちを脅して追い払い,そこを住みかにしていたからなのです.
その後も,何人かの勇敢な人々が化け物を退治しようと寺へ行ったことがありますが,生きて帰った人はだれひとりいなかったのです.
少年は,だれからもこのような話を聞いていなかったものですから,お坊さんたちにやさしく迎えてもらえるかもしれないと思って,わざわざその村までやってきたのです.
 
Reproduced by the courtesy of the Voice of America
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