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LITTLE WOMEN 若草物語 1-1

CHAPTER ONE PLAYING PILGRIMS 巡礼あそび 1

Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
「プレゼントのないクリスマスなんか、クリスマスじゃないわ。」と、ジョウは、敷物の上にねそべって不平そうにいいました。
「貧乏ってほんとにいやねえ。」と、メグはじぶんの着古した服を見ながらため息をつきました。
「ある少女が、いいものをたくさんもち、ある少女が、ちっとも、もたないなんて、不公平だと思うわ。」と、小さいエミイは、鼻をならしながらいいました。
「でもね、あたしたちは、おとうさんもおかあさんもあるし、こうして姉妹があるんだもの、いいじゃないの。」と、ベスが、すみのほうから満足そうにいいました。
 ストーブの火に照らしだされた四つのわかわかしい顔は、この快活な言葉でいきいきとかがやきましたが、ジョウが悲しそうに、「だって、おとうさんは従軍僧で戦争にいっておるすだし、これからも長いことお目にかかれないと思うわ。」と、いったとき、またもやくらい影におおわれ、
だれもしばらく口をききませんでした。けれど、やがてメグが調子をかえて、「おかあさんが、今年のクリスマスは、プレゼントなしとおっしゃったのは、みんな暮しがつらくなるし、兵隊さんたちが戦争にいっているのに、たのしみのためにお金を使うのはいけないと、お考えになったからよ。
あたしたち、たいしたことはできないけど、すこしの犠牲ははらえるし、よろこんではらうべきだわ。
でも、あたしはらえるかしら?」メグは、ほしいものを犠牲にするのがおしいというように頭をふりました。
「だけど、あたしたちの一ドルを献金したって、たいして兵隊さんの役にたつとは思えないわ。
あたしはおかあさんやあなたがたから、プレゼントがもらえないのはいいとして、じぶんでアンデインとシントラム(本の名)を買いたいわ。
前からほしかったんですもの。」と、本の好きなジョウがそういうと、
ベスはため息をつきながら、「あたしはあたらしい譜本を買いたいわ。」
 エミイも、きっぱりと、「あたし、フェバアの上等の色鉛筆がほしいわ。ほんとにあたしいるんですもの。」と、いいました。
ジョウは、「おかあさんは、あたしたちのお金のこと、なんにもおっしゃらなかったわ。だから、めいめいほしいものを買ってたのしみましょうよ。これだけのお金をもうけるのに、みんなずいぶん苦労したんだもの。」と、紳士がやるように長靴のかかとをしらべながらいいました。
「そうよ、ほとんど一日中、あのやっかいな子供たちの勉強を見てやるのたまらないわ。」と、メグがまたも不平をいいますと、
つづいてジョウが、「そんなことあたしの半分の苦労じゃないわ。
あたしは、神経痛で気むずかしいおばあさんに使われてさ。どんなにしてあげても気にいらなくて、いっそのこと窓からとびだそうか、それとも、おばあさんの横っ面をはりとばしてやろうかと思うくらいよ。」
「不平、いってもしょうがないけど、皿をあらったり、そこらを片づけたり、そんな家のなかの仕事は、ほんとにいやな仕事だわ。
手がこわばって、ピアノひけないわ。」
 ベスは大きなため息をついて、荒れたじぶんの手を見ました。
すると、エミイも大声でいいました。「あたしぐらい苦労しているものないわ。だって、あなたたちは、勉強ができないといっていじめたり、服がおかしいといって笑ったり、おとうさんが金持でないといったり、鼻のかっこうがわるいといってあざけったりする生意気な連中と、いっしょに学校にいかなくてもいいんですもの。」
こうして、みんなが不平をぶちまけたあげく、
メグがいいました。「あたしたちの小さいとき、おとうさんのなくされたお金が、今でもあったらいいと思わない? 
 すると、ベスが聞きとがめていいました。「こないだ、ねえさんは、キングさんのとこの子は、お金があっても、いつもけんかしたり怒ったりしてるから、あたしたちのほうがずっと幸福だっていったじゃないの?」
「ええ、いったわ。
あたしたちは、はたらかなければならないけど、ジョウのいうように、たのしいあいぼうですもの。」
「ジョウねえさん、あいぼうだなんてぞんざいな言葉だわ。」と、エミイは、敷物の上にねそべっているジョウのほうを見ていいました。
ジョウは、すぐに起きなおって、エプロンのかくしに、りょう手をつっこんで、口笛を吹きはじめました。
「ジョウ、およしなさい。まるで男の子みたい。」
「だから、あたしするの。」
「あたし、下品な、女らしくない子は大きらい。」
「あたし、気どり屋のおすまし、大きらい。」
 すると、仲裁者のベスがおどけ顔で、「おなじ小さな巣にいる小鳥、いつもなかよしあらそわぬ。」と、うたいだしたので、二人のとがった声も笑い声となりましたが、
メグがねえさんぶってお説教をはじめました。「二人ともいけないわ。
それにジョウは、もう男の子みたいなおいたはやめて、しとやかになさいよ。
 
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani
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