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LITTLE WOMEN 若草物語 20-1

Chapter Twenty Confidential うち明け話 1

Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
 おかあさんと、娘たちの対面を語る言葉はないようです。
こういう世にもうるわしい光景は、描写するにむずかしいものです。そこで、それはいっさい読者のみなさんの想像にまかせておいて、ただここでは、家のなかに真に幸福がみちあふれ、メグのやさしい望みがかなえられて、ベスが永いねむりからさめたとき、その目にうつった最初のものは、小さな白ばらの花と、おかあさんの顔であったということだけを述べておきます。
 ベスは、おとろえていたので、まだ気力がなく、ただにっこりと笑って、おかあさんに身をすりよせましたが、
そのあいだに、ハンナのよろこびでつくった朝のすばらしい御飯を、メグとジョウがお給仕しながら、おかあさんがあがりました。あがりながらおかあさんは、おとうさんの容態、ブルック氏が後にのこって看病をしてくれること、帰りの汽車が吹雪でおくれたこと、ローリイが希望にみちた顔で迎えに出ていてくれたので、つかれと寒さでくたくたになっていたが、口にいえない安心をしたことなどを、ひそひそと話しました。
 その日はなんという、ふしぎな気持よい日でしたろう。
外はまばゆいばかり、雪に日が照っていましたが、
エミイは一刻も早くあいたいのに、す早く涙をかわかしてその気持をおさえたので、ローリイは一人前の婦人みたいにりっぱな態度だとほめ、マーチおばさんも心から同意しました。
そして、エミイは、ローリイに散歩につれていってほしく思いましたが、たいへん疲れているようなので、それもがまんして、ローリイをソファにかけさせて休ませじぶんはおかあさんに手紙を書きました。
書きおわってもどってみると、ローリイはぐうぐうねむってしまい、そばにマーチおばさんが、いつになく親切心をあらわして、じっとすわっていました。
おかあさんのひざにすわって苦しかったことをうち明け、それをなぐさめる微笑と愛撫を得たとき、エミイはこの市で一ばん幸福だったでしょう。
おかあさんは、エミイのこの思いつきをほめました。
「家へ帰ったら、戸だなのすみに、聖母とあかちゃんの絵をかいてかざるつもりです。
イエスさまも前にはこんな小さいあかちゃんだと思うと、そんなに遠くはなれていらっしゃるかたではなく、いつもお助け下さるような気がします。」
おばさんが、今日キッスしてこれをゆびにはめて下さいました。そして、お前はわたしのほこりになるほどいい子だから、そばへおきたいとおっしゃいました。
これはめてても、よろしいでしょうか?」
「虚栄心を起さないようにします。
「マーチおばさんのこと?」
「いいえ、利己主義になってはいけないということ。」おかあさんは、エミイのまじめは顔つきを見て笑うのをやめました。
「あたし、このごろ、じぶんのわるいお荷物のなかで、利己主義が一ばんいけないと思いました。
ベスねえさんは利己主義でないから、あんなにかわいがられ、なくなると思うと、みんなはあんなに心配するんですわ。
「よござんすよ、だけど、戸だなのすみのほうが、もっといいでしょう。
よくなろうとまじめに考えたら、半分やりとげたようなものです。
では、おかあさんはベスのところへ帰ります。
元気でいなさいね。すぐに迎えに来ますからね。」
 その晩、メグが安着の知らせる手紙をおとうさんへ書いているとき、ジョウは二階のベスの部屋にそっといきましたが、おかあさんを見るとたちどまり、なにか心配そうなようすで、ゆびで髪をかきました。
「どうしたの?」と、おかあさんが手をさしのべてやりながら、尋ねました。
「お話したいことがありますのよ。」
「メグのことですか?」
「まあ、おかあさんの察しの早いこと! そうなんです。あたし気になるもので。」
「ベスがねむってますから、小さい声でね。あの、まさかマフォットが来たのではないでしょうね?」
「あんな人来たら門前ばらいくわせてやりますわ。」と、ジョウはおかあさんの足もとにすわりながらいいました。
「この夏ね、メグねえさんがローレンス家へ手袋を忘れて来たんです。片方もどって来ましたが、
ローリイが片方をブルックさんが持っているといってくれるまで、あたしたちそんなことを忘れていたんですの。あの方それをチョッキのかくしにいれていて、それを落したのをローリイが見つけてかかったんです。そうしたら、メグは好きだけど、まだ年はわかいし、じぶんは貧乏だからいい出せないって白状なさったそうです。
こと重大ではないでしょうか?」
「メグはあのかたを好いていると思いますか?」
「まあ! 恋とかなんとか、そんなくだらないこと、あたしわかりませんわ。
メグにはちっともそんなことはなく、
食べたり飲んだり、ふつうの人のように夜もよくねむりますわ。あのかたのこと、あたしがいっても、あたしの顔をまともに見ますし、ローリイが恋人なんかのじょう談をいっても、すこし顔をあかくするだけです。」
「それでは、メグがジョンさんに興味を持っていないとお思いなのね?」
「だれに?」と、ジョウはびっくりしました。
 
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani
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