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LITTLE WOMEN 若草物語 7-1

Chapter Seven Amy's Valley Of Humiliation はずかしめの谷 1

Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
 ある日、ローリイが馬にのって、家の前をむちをふって通りすぎるのを見て、エミイがいいました。
「ローリイさんが、あの馬につかうお金のうち、ほんのすこしでもほしいわ。」
 メグが、なぜお金がいるのか尋ねますと、
「だって、わたしたくさんお金がいるの、借りがあるんですもの、お小遣は、あと一月もしないともらえないし。」
「借りがあるって? なんのこと?」 メグは、まじめな顔になりました。
「塩漬のライム、すくなくっても、一ダースは借りがあるの。それに、おかあさんは、お店からつけでもって来るのいけないとおっしゃるし。」
「すっかり話してごらんなさいよ。」「今ライムがはやっているの?」
「ええ、みんなライム買うわ。メグさんだって、けちだと思われたくなかったら、きっと買うわ。
そして、みんな教室で机のなかにかくしておいてしゃぶるの。お休み時間には、鉛筆だの、ガラス玉だの、紙人形やなにかと、とりかえっこするの。
また、好きな子にはあげるし、きらいな人の前では見せびらかして食べるの。
みんなかわりばんこにごちそうするの、あたしも、たびたびごちそうになったわ。それをまだお返ししてないの、どうしてもお返ししなければねえ、だってお返ししなければ顔がつぶれてしまうわ。」
「お返しするのに、どのくらいいるの?」 メグは、財布をとり出しながら尋ねました。
「二十五銭でたりますわ。あまったぶんで、おねえさんにも、ごちそうできますわ、ライムお好き?」
「あまり好きじゃないわ。あたしのぶんもあげます。では、お金、できるだけ長く使うのよ、ねえさんだって、もうそんなにないんですから。」
「ありがとう。お小遣のあるの、いい気持ねえ、みんなにごちそうしてあげるわ、わたしこの週は、まだ一度もライム食べないわ。ほんとは食べたいけど、お返しできないのに、一つでもいただくの気がひけるわ。」
 つぎの日、エミイはいつもよりすこしおそく学校へ行きました。けれど、しめった、とび色の紙づつみを机のおくにしまう前に、みんなに見せびらかしてしまいました。
すると、それから五分とたたぬうちに、エミイが二十四のおいしいライム(エミイはその一つを学校へ来る途中で食べました。)をもっていて、それを大ぶるまいするといううわさが、たちまち仲間につたわり、お友だちの、エミイへのおせじは、ものすごいものとなりました。
ケティはつぎの宴会によぶといいましたし、
キングスレイは、つぎのお休み時間まで、時計を貸してあげるといいましたし、ライムをもっていないといって、エミイをあざけったことのあるスノーという、いじわるの子もたちまち好意をよせて、エミイの得意でない算数を教えてやるといいました。
けれど、エミイは、スノーのいったわる口を忘れてはいけませんでした。それで、きゅうにそんな親切はむだよ、あなたにあげないという、電報を発して、スノーの希望をぺしゃんこにしてしまいました。
 ところが、ちょうどその日、ある名士が学校へ参観に来ました。そして、エミイのかいた地図がおほめにあずかりました。その名誉にエミイは得意になり、スノーははげしい苦しみを味わいました。
そこで、名士が教室から出ていくと、重要な質問でもするようなふうをして、デビス先生のそばへいき、エミイがライムを机のなかにかくしていることを告げました。
 デビス先生は、きびしい先生で、チュウインガムのはやったときも、とうとうやめさせてしまいましたし、小説や新聞をもって来ると、とりあげてしまいました。生徒が手紙をやりとりすることもよさせました。ですから、ライムがはやりだすと、ライムをもって来てはいけない、もしもって来た者を見つけたらむちでうつと、おごそかにいわたしたのです。それは、つい一週間ほど前のことでした。
それで、スノーの告げたライムという言葉は、まるで火薬に火をもっていったようなものでした。
「みなさん、しずかに! 
エミイ・マーチ、
 となりにいた生徒が、ささやきました。「みんなもっていくことないわ。」
 そこで、エミイはす早く半ダースほどを、つつみからふり落して、先生のところへもっていきました。
先生は、このライムのにおいが大きらいでしたから、顔をしかめて、
「これで、みんなですか?」
「いいえ。」と、エミイは口ごもりました。
「のこりをもって来なさい。」
 エミイは、じぶんの席へ帰り、いわれたとおりにしました。
「たしかに、もうのこっていませんか?」
「うそ、いいません。」
 
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani
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