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LITTLE WOMEN 若草物語 8-3

Chapter Eight Jo Meets Apollyon ジョウの原稿 3

Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
川までは、そんなに遠くなかったが、エミイがいったとき、二人はすべる用意ができていました。
ジョウは、エミイのすがたを見ると、くるりとせなかをむけました。
ローリイは、エミイの来たのに気がつかず、氷のあつさをしらべるために、そのひびきを聞きわけながら、用心ぶかく岸にそってすべっていきました。
ローリイは、角をまがるとき、
 そういって、すがたが見えなくなりました。
 ジョウが、すべって、その角までいったとき、エミイはずっとはなれたところで、川のまんなかへすべっていきました。
ジョウは、みょうな心さわぎをおぼえましたが、ふいに氷のさける、ばりっという音とともに水けむりをたて、エミイがりょう手をあげ、悲鳴とともに落ちこむのを見ました。その悲鳴に、ジョウは心臓がとまると思うくらい、おどろきました。
ローリイをよぼうとしましたが声が出ません。
すると、なにかが、じぶんのそばを走ったと思うと、
「ぼうをもって来て、早く、早く!」と、ローリイのどなる声が聞えました。
 ふるえて、ぼとぼとしずくをたらしながら泣いているエミイを、二人は家までつれて帰りました。ジョウは、口ひとつきかず、青い顔をし、手にきずをし、服はさけたままで、とびまわり、なにかと用事をしました。さわぎがおさまった後、エミイは毛布にくるまって炉の火の前でねむってしまいました。
 おかあさんは、エミイのそばにすわってましたが、ほっとして、ジョウをよんで、手にほうたいをしてやりました。
「ええ、けがもしていないし、かぜもひかなかったようです。あなたが、よくくるんで、大いそぎでつれて来てくれたからね。」
「ローリイが、みんなしてくれたのです。わたしは、エミイをほっといたから、一人ですべっていって落ちたんです。もしかして死んだら、あたしのせいですわ。」
 ジョウは、後悔の涙を流しましたが、それはもっと重い心の痛みからのがれることのできた、感謝の涙でもありました。
「みんな、あたしの、おそろしいかんしゃくからですわ。ああ、どうして、こうなんでしょう。おかあさん。どうぞあたしを救って下さい。」
「ええ、ええ、救ってあげますよ。そんなに泣かないでね。今日のことよく覚えておいて、二度としないと誓いなさい。
おかあさんだって、じつは、あなたとおなじくらい、かんしゃくもちなんですよ。それに、おかあさんはうち勝とうとしているんです。」
「まあ、おかあさんが? だって、一度だって、かんしゃくを起しなすったの、見たことがありませんわ。」 ジョウは、おどろしい目をまるくしました。
「なおすのに四十年かかりました。やっとおさえられるようになりました。
ほとんど、まい日、怒りたくなるけど、顔に出さぬようになったのです。これからは、怒りたくならないようにしたいのですが、それには、もう四十年かかるかもしれません。」
 ああ、その言葉はジョウにとって、どんなお説教より、はげしいおしかりより、よい教訓でありました。
そして、四十年も祈りつづけて欠点をなくそうとしたおかあさんのように、じぶんもどうかしてこの欠点をなおしたいと思いました。
 
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani
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