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ホーム青空文庫シャーロック・ホームズ コレクション 最後の挨拶

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Sherlock Holmes Collection His Last Bow シャーロック・ホームズ コレクション 最後の挨拶

The Adventure Of The Dying Detective 瀕死の探偵 7

Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
「ホームズゥ!」と声をあげる。
「ホームズゥ!」眠りを揺さぶるような強い調子だ。
「声は聞こえるゥ? ホームズゥ?」
そして、病人の肩をつかんで手荒く揺さぶっているのか、布ずれの音。
「君は、スミスくんか?」ホームズの小さな声。
「来ないものと思っていた。」
 その男は声を立てて笑った。
「ボクも夢にも思わなかった。」と小男は言う。
「でも、ご覧の通り、ここにいる。怨みに徳をだよ、ホームズゥ――火をこれが首にィ!」
「素晴らしい人だ――人徳者だ。
その特殊な知識には恐れ入ります。」
 小男はにたりと笑う。
「そうだねェ。嬉しいことに、そう言ってくれるのはロンドンでもキミだけだ。
自分の身に何が起こっているか、ご存じィ?」
「例のものです。」とホームズが言った。
「ああ! 兆候に気づいてるゥ?」
「わかりすぎるほどに。」
「そう、自然なことだねェ、ホームズ。自然なことだよォ、万一、例のものだとしてもネ。
もしそうなら、先が不安だねェ。ヴィクタはかわいそうに四日目で亡骸――健康な若者だった、の、に。
ほら、キミが言ったみたいに、本当にびっくりだよォ。ロンドンのど真ん中で、片田舎のアジアの病気にかかるなんて――その病気って、ボクが特別に研究してたやつなんだけどねェ。
不思議な偶然だネ、ホームズゥ。そこに気づいたキミはすっごく偉いけど、そこに因果を見るのは、ちょっと厳しいんじゃ、ない、の。」
「君の仕業だと分かっている。」
「え、分かる、知ってるゥ? へぇ、証拠の出せないのに、それでもォ? 
でも、どういうことォ? 自分でボクについてそんな噂を流しておいて、いざ困ったらボクに助けてとすがりつく、の? 
いったい何のおふざけ――ネェ?」
 病人のぜえぜえという息づかいが聞こえてくる。
「水をくれ!」と声を振り絞る。
「まさに今わの際だねェ、キミ。でも逝く前に一言だけ聞かせてヨ。
だから水もあげるゥ。
ほら、こぼさないで! そうそう。
ボクの言うこと、わかるゥ?」
 ホームズは呻いた。
「どうか手当を。
過去は水に流しましょう。」と低い声で言った。
「あのことは、頭の外へやってしまいます――約束しましょう。治してくだされば、あのことは忘れます。」
「忘れるって何を?」
「その、ヴィクタ・サヴィッジ死亡の一件です。
先ほどお認めになったも同然です。自分がやったと。そのことを忘れましょう。」
「忘れるも覚えるも好きにするがいいサ、証人席には立てないヨ。
別の場所を、ネェ、ホームズくん、約束するよォ。
どうでもいいんだ、キミが甥の死因を知っていようと。
今の話題は甥じゃなくてキミ、なんだ、よ、キミ。」
「そう、です。」
「ボクのところに来たやつ――名前は忘れたけど――話じゃ、イースト・エンドの水夫の中で病気になった、とかァ。」
「そうとしか考えられない。」
「ご自慢の頭脳は、ホームズゥ、どうしたのォ? 
それで頭がいいとでも? 
今、キミは自分より頭のいい人間を見つけたんだ。
さあ、思い出して、ご、ら、ん、ホームズ。
他に思いつかないィ? どこか他でもらったんじゃ、ないか、って。」
「わからない、頭が働かない、お願いだ助けてくれ!」
 
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo
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