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Sherlock Holmes Collection His Last Bow シャーロック・ホームズ コレクション 最後の挨拶
The Adventure Of The Dying Detective 瀕死の探偵 8
Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
今どんなざまなのか、どうしてそうなったのか、わかるように助けて、あ、げ、るゥ。
「苦しいよねェ? そう、クーリーどもも死に際に多少わめくのがお決まりだったねェ。
じゃあ聞いて! そういえば、いつもと変わったことがなかったァ?」
「まァ、いい、教えてあげるゥ。何か郵送されてこなかったァ?」
そして瀕死の病人を揺すぶるような音。私は物陰でじっとしているのが精一杯だった。
「聞かなきゃ駄目だ! 聞く運命だからネ。箱は覚えてるゥ?――象牙の箱。水曜に来たでショ。キミはそれを開けた――思い出したァ?」
「ああ、そうだ、開けた。中に強い発条が入っていた。何かの悪戯――」
バカだねェ、そんなことするから、こんなことに。誰に頼まれたの、ボクの邪魔を?
ボクのこと放ってくれてたら、痛めつけないで済んだのにィ。」
「あの発条か! 血が出た。この箱――机の上のこいつが。」
でもネ、真相はつかんだけど、ホームズ、ボクに殺されたと気づいたまま、死んだらいい。
キミは知りすぎたんだ、ヴィクタ・サヴィッジの死につ、い、て。だから、そいつをお裾分けしたってワケ。
いいよ、つけてあげるゥ、ボクもよく見たいからネ。」
「他に何かボクがしてあげられることはない、キミ?」
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo