※本文をクリック(タップ)するとその文章の音声を聴くことができます。
右上スイッチを「連続」にすると、その部分から終わりまで続けて聴くことができます。
※ "PlayBackRate" で再生速度を調節できます。
Sherlock Holmes Collection His Last Bow シャーロック・ホームズ コレクション 最後の挨拶
The Adventure Of The Dying Detective 瀕死の探偵 7
Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
そして、病人の肩をつかんで手荒く揺さぶっているのか、布ずれの音。
「でも、ご覧の通り、ここにいる。怨みに徳をだよ、ホームズゥ――火をこれが首にィ!」
「そうだねェ。嬉しいことに、そう言ってくれるのはロンドンでもキミだけだ。
「そう、自然なことだねェ、ホームズ。自然なことだよォ、万一、例のものだとしてもネ。
もしそうなら、先が不安だねェ。ヴィクタはかわいそうに四日目で亡骸――健康な若者だった、の、に。
ほら、キミが言ったみたいに、本当にびっくりだよォ。ロンドンのど真ん中で、片田舎のアジアの病気にかかるなんて――その病気って、ボクが特別に研究してたやつなんだけどねェ。
不思議な偶然だネ、ホームズゥ。そこに気づいたキミはすっごく偉いけど、そこに因果を見るのは、ちょっと厳しいんじゃ、ない、の。」
「え、分かる、知ってるゥ? へぇ、証拠の出せないのに、それでもォ?
でも、どういうことォ? 自分でボクについてそんな噂を流しておいて、いざ困ったらボクに助けてとすがりつく、の?
「まさに今わの際だねェ、キミ。でも逝く前に一言だけ聞かせてヨ。
「あのことは、頭の外へやってしまいます――約束しましょう。治してくだされば、あのことは忘れます。」
先ほどお認めになったも同然です。自分がやったと。そのことを忘れましょう。」
「忘れるも覚えるも好きにするがいいサ、証人席には立てないヨ。
どうでもいいんだ、キミが甥の死因を知っていようと。
「ボクのところに来たやつ――名前は忘れたけど――話じゃ、イースト・エンドの水夫の中で病気になった、とかァ。」
他に思いつかないィ? どこか他でもらったんじゃ、ないか、って。」
「わからない、頭が働かない、お願いだ助けてくれ!」
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo