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Sherlock Holmes Collection His Last Bow シャーロック・ホームズ コレクション 最後の挨拶
The Adventure Of The Dying Detective 瀕死の探偵 6
Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
「ホームズくんはどうしてボクが自分の窮地を救えると?」
「しかし、どうしてまた、自分のかかっている病が東洋のだと考えたのカナ?」
「それは、仕事上の調査で、埠頭の中国人水夫に混じって働いていたからだと。」
カルヴァトン・スミス氏はにこやかに微笑み、喫煙帽を拾い上げた。
「ちょっ、ちょっ! そりゃ深刻だねェ。呼ばれて行かなきゃ、人として駄目だよねェ。
仕事の邪魔をされるの、すっごく嫌なんだけどォ、ワトソン博士、今日だけは本当に例外ですよォ。
「結構、ボクひとりで行くヨ。どこかにホームズくんの住所は控えてあったネ。
大丈夫、遅くとも、三十分のうちには行くからねェ。」
一安心できたのは、そのあいだにずいぶん快方へ向かっていたからだ。
顔は依然と同じく青ざめていたが、うなされた気配もなく、確かに声は弱々しかったが、普段以上に口調はてきぱきとしていた。
「でかした、ワトソン! でかした! 君は世界一の使者だ。」
「絶妙だ! いや、ワトソン、君は友人としてできることをすべてやり遂げた。もうこの場から消えていいよ。」
だが、僕はこう推理する。その所見とやらは、奴にふたりきりと思わせた方が、より率直で価値のあるものになるはずだ。
この寝台の頭側の陰にちょうど隙間があるんだ、ワトソン。」
この隙間は身を隠すのに適当でないし、それなりに疑われるかもしれない。
突然、ホームズは窶れた顔に緊張の色を見せて起き直った。
身動きしないこと、何が起ころうと――何が起こったとしてもだ、いいかい?
口を閉じて! じっとしている! 聞き耳を立てるんだ。」
すると、その刹那、急に発作の勢いが抜けて、要領を得た命令口調がするすると錯乱気味の低くて聞きづらいぼやきに変わる。
その物陰に素早く身を隠すと、階段から足音が聞こえ、寝室の戸が開け閉めされる。
すると驚いたことには、しばらく何の声もしない。ただ病人の重苦しそうな息づかいと喘ぎとが聞こえるのみだ。
気配はある。人が寝台の脇に立ち、病人を見下ろしている。
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo