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ホーム青空文庫シャーロック・ホームズ コレクション 最後の挨拶

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Sherlock Holmes Collection His Last Bow シャーロック・ホームズ コレクション 最後の挨拶

The Adventure Of The Dying Detective 瀕死の探偵 8

Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
「よしよし、助けてあげるゥ。
今どんなざまなのか、どうしてそうなったのか、わかるように助けて、あ、げ、るゥ。
それを知ってから死んでほしいんだァ。」
「この苦しみを和らげるものを。」
「苦しいよねェ? そう、クーリーどもも死に際に多少わめくのがお決まりだったねェ。
次は痙攣、かなァ?」
「ああ、そうだ、痙攣だ。」
「おやァ、言葉は分かるのかなァ、それでも。
じゃあ聞いて! そういえば、いつもと変わったことがなかったァ?」
「いや、ない。何も。」
「よォく考えて。」
「苦しくて考えるのはとても。」
「まァ、いい、教えてあげるゥ。何か郵送されてこなかったァ?」
「郵送?」
「たとえば、箱、とかァ?」
「眩暈が――だめだ!」
「聞くんだ、ホームズ!」
そして瀕死の病人を揺すぶるような音。私は物陰でじっとしているのが精一杯だった。
「聞かなきゃ駄目だ! 聞く運命だからネ。箱は覚えてるゥ?――象牙の箱。水曜に来たでショ。キミはそれを開けた――思い出したァ?」
「ああ、そうだ、開けた。中に強い発条が入っていた。何かの悪戯――」
「悪戯じゃないヨ、こんなひどい目に遭ってるんだ。
バカだねェ、そんなことするから、こんなことに。誰に頼まれたの、ボクの邪魔を? 
ボクのこと放ってくれてたら、痛めつけないで済んだのにィ。」
「わかったぞ。」ホームズが声を絞る。
「あの発条か! 血が出た。この箱――机の上のこいつが。」
「正解、おめでとう! 
だから持ち帰らず、置いてくのもいいかもねェ。
決めの証拠になるんでショ。
でもネ、真相はつかんだけど、ホームズ、ボクに殺されたと気づいたまま、死んだらいい。
キミは知りすぎたんだ、ヴィクタ・サヴィッジの死につ、い、て。だから、そいつをお裾分けしたってワケ。
もう終わりも近いねェ、ホームズゥ。
ここに腰掛けて、死に様を見物するよォ。」
 ホームズの声はほとんど聞き取れないほど小さい。
「何だって?」スミスが言った。
「ガスをひねるゥ? へぇ、もう日暮れ時かァ。
いいよ、つけてあげるゥ、ボクもよく見たいからネ。」
彼が部屋を横切り、ぱっと明かりがつく。
「他に何かボクがしてあげられることはない、キミ?」
「マッチと煙草を一本。」
 
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo
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