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The Return of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの帰還

The Adventure Of The Three Students 三人の学生 7

Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
「さてワトソン、君はこれをどう思うね?」
とホームズが聞いてきたのは、大通りに出たときのことだった。
「実にささやかな室内遊戯――三枚伏せて、女王はいずこ、というやつだ。
今あるのは三枚の学生。うち一枚だけが当たり。
選びたまえ。どれを取る?」
「最上階の口悪いやつだ。
これまでの素行も最低だからね。
ただあのインド人も不気味だ。
なんだって始終部屋を歩き回ったりする?」
「何があるわけでもない。
モノを暗記しようとすれば、たいていの人間がそうなる。」
「我々に妙な目つきを。」
「それこそ誰でもだ。見知らぬ連中が、明日の試験に備えているところへ、一分一秒が大事なところへ押しかけてきたのだ。
なし、何もなしだ。
鉛筆も刃物も――みな納得いく。
だがあの人物が実に悩ましい。」
「あの、とは?」
「なに、使用人のバニスタだ。
この一件におけるやつの狙いは何か。」
「まったくの正直者という印象だが。」
「それは僕とて同じ。そこが悩ましいのだ。
どうしてあれほどの正直者が――ふむ、よし、大きな文房具屋に着いた。
ここでひとつ調査と行こう。」
 この町には目立った文房具屋は四店しかなく、一店ずつホームズは鉛筆の端切れを取り出してみせては、全く同じものがないかと訊ねた。
どこの店も口を揃えて、注文は受け付けるが、この鉛筆はよくある品番ではなく、めったに在庫していないとのこと。
わが友人はこの肩すかしにも気落ちする様子はなく、ただなかば愉快に受け入れるがごとく肩をそびやかす。
「参ったよ、ワトソンくん。
最大にして最後の手がかりから何も得られずだ。
とはいえ実のところ、これがなくとも間違いなく十全な真相を組み立てられよう。
しまった! ほら、九時近い。下宿の女主人が七時半の豌豆えんどうの事を何だかぶつくさぶつくさ言っていたな。
君は始終煙草で、ワトソン、食事の時間は不規則、いずれは出て行けと言われる羽目になろうから、僕もとばっちりを受けることになる――とはいえ、それまでにはあの心配性の講師とうかつな使用人、三人の前途ある学生の問題は片付いているね。」
 その日のホームズは、これ以上この件について触れなかったが、遅れた夕食のあと長々と考えに耽ってはいた。
翌朝八時、友人がこちらの部屋に入ってきた頃には、ちょうど私も身だしなみを済ませていた。
「さてワトソン。」と友人。「聖ルークへ出向く頃合いだ。
朝食はなしでも構わないか?」
「ああ。」
「ソウムズにいい知らせを伝えねば、いつまでもひどく落ち着きないままだろうからな。」
「言えそうなのか、いい知らせが。」
「と、思っている。」
「結論が出たと?」
「ああ、ワトソンくん、謎は解けている。」
「とすると、新しい証拠をつかんだのだね。」
「ふふふ! 六時という早すぎる時間に寝台から身を起こしたのだ、何もないわけがない。
この二時間精を出して、少なくとも五マイルは歩き回り、その成果となるものを得た。見たまえ!」
 友人は手を差し出す。
手のひらには三つの小さな塊、つまり黒い泥があった。
「おいホームズ、昨日は二つだけだったのに。」
「もうひとつが今朝だ。
まっとうな論理で行けば、この三つ目の取った場所がどこであれ、一つ目と二つ目の出所でもあるということ。だろう、ワトソン?
さて行こう。そして友人ソウムズを悩みから解き放とう。」
 
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo
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