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The Return of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの帰還

The Adventure Of The Three Students 三人の学生 8

Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
 あわれ講師は、我々が部屋に入ったときも、間違いなくひどく不安にかられた有様にあった。
数時間後には試験が始まるが、事実を公にするか、この多額の奨学金がかかった試験に犯人を受けさせたままにするか、いまだこの二つのあいだで苦しんでいたのだ。
もはやじっとはしていられず、心の動揺も収まらないので、ホームズに駆け寄り、ただ一心に両手を差し出す。
「お越しいただき感謝します! もう見捨てられたのかと怖くて怖くて。
わたくしはどうすれば? 試験はやるべきで?」
「ええ、行うことです、ぜひとも。」
「しかし不届者が。」
「その者は受けません。」
「まさか見当が?」
「ついたと思っています。この件を公にしてはならないのなら、我々は自分たちにある権限を課し、私的な裁きへと身を投じねばなりません。
よろしければあなたはそちらへ、ソウムズさん! ワトソン、君はこっちだ! 僕は真ん中の肘掛椅子に座りましょう。
おそらくこれだけ物々しければ十分罪人を威圧することができます。
どうか鈴をお鳴らしに!」
 入ってきたバニスタは、我々の剣幕にあからさまに恐れおののき、後ずさる。
「どうか扉をお閉めいただきたい。」とホームズ。
「さてバニスタ、昨日の一件についてどうか本当のことを話してほしい。」
 その人物の顔面が蒼白となる。
「みな申し上げてございます。」
「言い添えることは何も?」
「何もございません。」
「ふむ、では問いかけをこちらから。
昨日、君はあの椅子に腰を下ろした。その際、何か物を隠そうとしたのではないのか。部屋にいた者の足が着く、何かを。」
 バニスタの表情には生気がなかった。
「滅相もございません。」
「これは問いかけに過ぎない。」とホームズの慇懃な口ぶり。
「正直のところ、僕にも証明できない。
だが十分ありうる。というのも、ソウムズさんが背を向けるや、たちまち寝室に隠れていた男を逃がしたからだ。」
 バニスタは乾いた唇を舐める。
「誰もおりませんでした。」
「なんと不憫な、バニスタ。早く真相を打ち明ければよかったものを。もう君の嘘はお見通しなのだ。」
 男の顔からは、強い抵抗の意志が見て取れる。
「誰もおりませんでした。」
「よしたまえ、バニスタ!」
「いえ、いなかったのです、誰も。」
「ということは、何も言えないというのだね。
このまま部屋にいてくれたまえ。
向こうに立って、寝室の扉のそばだ。
さてソウムズ、あなたにお願いしますが、上のギルクリスト青年の部屋へ行って、引きずり下ろしてくれるとありがたい。」
 するとたちどころに講師は戻ってきて、当の学生を連れてくる。
健康体で背も高く、しなやかで足取り軽く、顔も明るく晴れやかだ。
ただその青い目は不安げに我々ひとりひとりへ向けられ、奥隅にバニスタを見つけるや、とうとう顔色も真っ青となる。
「ひとつ扉をお閉めに。」とホームズ。
「さてギルクリストくん、ここには我々しかいない上、ここで交わされた言葉は何ひとつ他言されない。
お互い包み隠すことはない。
我々は知りたいのだ、ギルクリストくん、どうして君のような誠実な人間が、昨日のようなことをしでかすに至ったのか。」
 
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo
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