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Episode-2 Barnstorm
Episode-2 Barnstorm
WORDS AND THEIR STORIES
きょうは「遊説する」である。意味は、全国を回って、できるだけ広く大衆の支持を政治とか経済の計画に対して得るということである。
テレビが出現する以前、アメリカの大統領がむずかしいことだと思っていたのは、ちいさな町や村の人々の政治的支持を得ることだった。つまり、民衆の支持を得ることであった。
最初、政治的指導者とか公職の立候補者は、汽車でへんぴなちいさな町や村を回らねばならなかった。
そのような町や村は信号停車駅といわれていたが、汽車はふだんそんな所には止まらなかったからである。
汽車が着くと、そこの人々がわずかに集まって来て、最後部の車両の後尾を囲んだ。
屋根のないプラットホームで、大統領とか大統領候補者は直接、演説を聞きに来た人たちに話しかけた。
汽車を町々、村々で臨時に止めて遊説するのは、古くからの政治的やり方で、アメリカ独立当時以来のものであった。
ずっと速いので、候補者ははるかに広く回ることができた。
多くの大統領や大統領候補者は大成功をおさめた。というのは、全く巧みに民衆に訴えかけることができたからである。つまり、農場主や農夫に、またちいさな町の工場労働者に対してである。
最近の大統領の例で、地方遊説に出かけたのは、重要な計画に対して議会の承認を得られなかったり、外交政策に関して議会の支持が得られなかったりした時である。
barnstormということばは古い言い回しで、演劇界から出たものである。
昔にさかのぼり、巡業して回る俳優や芸人を迎える劇場やホールがほとんどなかったころのことである。
彼らの大げさな演技やせりふの語りっぷりは、素人か、ろくに訓練していない役者といった風だった。
でも俳優の方では自分たちの芸がよかったので、納屋の観衆を魅了したものと思ったのである。
barnstormということばはこのようにして生まれた。
しかし納屋に集まった村人たちはこのような騒々しい演技やせりふを好んだので、大根役者の劇団は兵士のように納屋を急襲したものだった。
1800年代の中ごろ「納屋を急襲する」ということばがアメリカの政治用語となり、ちいさな田舎の町に政治演説のため足早に立ち寄ることをいうようになった。
演説を納屋でした人もあったかもしれないが、普通は戸外の、村の広場でやったものだった。
この長年親しんで来た遊説のやり方はだんだん行われなくなって来ている。
人里離れた村などでも大統領または議員候補のテレビ演説を聞くことができるからである。
それでもやはり多くの議員候補が好むのは直接向かい合って、人々に話しかけることである。
そのうえテレビはとてもお金がかかるので、多くの候補者は経済的にテレビによる選挙運動ができない。
だから、古い遊説のやり方は完全に消滅してはいないのである。
テレビに現れる冷たい舞台役者じみたイメージよりは、地方遊説の方がもっと生き生きとしている。
Reproduced by the courtesy of the Voice of America