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LITTLE WOMEN 若草物語 13-2

Chapter Thirteen Castles In The Air 美しい空中楼閣 2

Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
ところで、おかあさんは、あたしたちを、外へ出したがっていらっしゃるので、この丘へ仕事を持って来て、おもしろくやっているの。」
 ローリイは、うなずいていいました。「ああ、それで、ふくろをしょい、杖をつき、古い帽子をかぶるんですね。」
「あたしたちは、この丘のことを、よろこびの山といってますの。ずっと、むこうまで見わたせるし、あたしたちが、いつかは住んでみたいと思う国も見えるからです。」
 ジョウが、ゆびさしたので、ローリイは立ちあがってながめました。あおい川、ひろびろとした草地、そのむこうのみどりの山々、
その峰にたなびく金と紫の雲、まことに、天の都を思わせるものがありました。
「なんてうつくしいんだろう!」と、ローリイは、美しさをす早く見つけました。
「あのうつくしい景色のところが、あたしたちのほんとの国で、みんなでそこへいけたら、うれしいと思うわ。」と、ベスがいいますと、
メグは、やさしい声で、「あれよか、もっとうつくしい国があるのよ。あたしたちが、りっぱな人になったら、そこへいけるのよ。」と、いいました。
「ベスなんか、いつかいけるでしょうが、
あたしなんか、戦ったりはたらいたり、のぼったりすべったりで、いかれそうにもないわ。」 ジョウがいうと、
でも、ぼくがその旅におくれたら、やさしい言葉をかけてくれるでしょうね?」
 ベスは、なんと返事してよいかこまったようでしたが、快活にいいました。「だれだって、ほんとはいきたい気持で、一生、努力の旅をつづけたら天の都へいけると思うわ。」
 しばらく沈黙がつづいた後、ジョウがいいました。「あたしたちの勝手に考える空中楼閣がみんなほんとのものになって、そこに住むことができたら、どんなにおもしろいでしょう。」
「ぼくは見たいだけ世界を見物してから、ドイツにおちついて、好きなだけ音楽を勉強して、有名な音楽家になるんです。
けれど、ぼくはお金だとか、商売とかすこしも気にかけずに、じぶんの好きなように暮すんです。
これがぼくの気にいっている空中楼閣です。」
 ローリイがそういうと、メグがつぎをつづけました。「あたしは、いろいろぜいたくなものが、たくさんあるうつくしい家がいいわ。おいしい食べもの、きれいな服、りっぱな道具、感じのいい人たち、そして、お金は山ほどあるの。
あたしその家のおくさんで、召使をたくさん使って。でも怠けたりしないで、いいことをして、みんなからかわいがられたい。」
 ジョウは、ずばりと、「おねえさんは、なぜりこうでやさしい夫と、天使のような子供がいてと、おっしゃらないの。それがなかったら、おねえさんの空中楼閣はできないわ。」と、いいました。
「あなたの空中楼閣には、馬とインクつぼと小説しかはいっていないんでしょう?」と、メグはすこしむっとしていいかえしました。
「いいじゃないの。アラビア馬のいっぱいはいった馬屋と、本をつみあげた部屋と、魔法のインクつぼがあれば、あたしは、そのインクつぼで、ローリイの音楽とおなじくらい、有名な作品を書くんだわ。
だけど、あたしその空中楼閣へはいる前に、なにかすばらしい英雄的なこと、そうね、あたしが死んでも人から忘れられないようなこと、やってみたいわねえ。
そうだ、あたし本を書いてお金持になり有名になれたらいいわ。それがあたしに似合っているの。それ、あたしの大好きな空想よ。」
「あたしのは、無事におとうさんやおかあさんといっしょに家で暮して、家の人たちの世話をしてあげることですわ。」と、ベスがいうと、
ローリイが尋ねました。「ほかには、なにか望みはないの?」
「あのかわいいピアノをいただいたから、ほかになんにも望みはありません。」
 すると、エミイがいいました。「あたしは、絵をかきにローマへいき、りっぱなものをかいて、世界中で一ばんえらい画家になることですわ。」
「ぼくたち、なかなかの野心家ですね。ベスのほかは、金持になり、有名になり、あらゆる点でえらくなろうというのですから。」と、ローリイがいうと、
ジョウが、「今から十年たって、みんな生きていたらあつまって、だれが望みをとげたか、だれが望みに近づいたか見ましょうよ。」と、いいました。
「そしたら、あたしいくつ? 二十七ね。」と、メグ。すると、
すぐにジョウが、「ローリイとあたしが二十六、ベスが二十四、エミイが二十二、なんとみなさん、相当の御先輩というわけね。」
「ぼくは、それまでになにか、じまんになるようなことしたいな、だけど、ぼくはこんな怠け者だから、だめだろう。ねえ、ジョウ。」
 
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani
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