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The Adventures of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの冒険
A Scandal in Bohemia ボヘミアの醜聞 10
Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
三
その晩、私はベイカー街に泊まった。翌日、我々が朝のトーストとコーヒーを摂っているとき、ボヘミア王が部屋へ駆け込んできた。
「手に入れたとな!」と王はシャーロック・ホームズの両肩をつかみ、顔をぐっとのぞき込んだ。
「イレーナ・アードラーは結婚しました。」とホームズ。
陛下を愛さないのなら、おのずと邪魔をする理由もなくなりましょう。」
ああ! 余の身分に相応しくあれば! なんと素晴らしき妃となったことか!」
と王はふさぎ込んで黙ってしまい、サーペンタイン並木道に着くまで口を開かなかった。
ブライオニ荘の扉は開かれていて、年輩の女性が石段の上に立っていた。
ブルームから下りる我々を、女性は冷ややかな目で見守っていた。
「シャーロック・ホームズさまとお見受けしますが。」と女性。
「僕がホームズです。」とパートナーは答え、不審と驚きに満ちたまなざしを向けた。
「まぁ。奥様が、あなたがお越しになるとおっしゃったのです。
奥様は今朝方、旦那様とともに五時十五分、チャリング・クロス発大陸行の汽車でお発ちになりました。」
「何と!」とシャーロック・ホームズは無念と驚愕のため、顔面を蒼白にして、立ちくらむ。
「手紙と写真はいかに?」と王は声もかすれかすれに、
とホームズは女中を押しのけ、居間へと飛び込んだ。王も私も後に続いた。
家具は部屋中に散乱し、棚は外され、引き出しは開いているという始末で、高飛びに先駆け、あの女性が引っかき回した様子だった。
ホームズは呼び鈴の紐へ駆け寄り、羽目板をずらし、手を突っ込んだ。出てきたのは一枚の写真と一通の手紙だった。
写真にはイヴニング・ドレス姿のアイリーン・アドラーが写っていて、手紙には『シャーロック・ホームズさまへ。ご訪問時は不在につき。』と宛名してあった。
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Yu Okubo