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Episode-7 The Law of Life(1) 生命の掟
Episode-7 The Law of Life (Jack London) 生命の掟 (ジャック・ロンドン)
AMERICAN SHORT STORIES
「アメリカの声」が,特別英語によるアメリカの短編小説をお送りします.
原作者は,アメリカの最も有名な小説家の一人であるジャック・ロンドンです.
彼の小説は海や船に関するものか,極寒の北部地方に関するものが多かったのです.
これらの小説の一つに,極寒の北部地方に住んでいたインディアンの一団を描いたものがあります.
きょうはその物語です.題名は『生命の掟』です.ロイ・デビューが特別英語でお送りします.
彼の名はコスクーシュといって,もとは部族のしゅう長をしていた男です.
今ではもう何もできなくなって,ただ座ったままで,ほかの連中の話を聞いているだけでした.
彼はもう年を取っていて目は見えませんでしたが,物音はなんでも聞きもらすまいと,耳をそば立てていました.
彼女は犬をぶって,雪ぞりの前に立たせようとしているのです.
彼女もほかの連中も,コスクーシユのことは念頭にありません.
彼らは,新しい狩猟場を捜し求めなくてはならないのです.これから雪の中をそりに乗って,長い旅に出かけなくてはなりません.
それに北部地方の日はだんだん短くなっていくのです.
コスクーシユは死にかかっていますが,部族の人々は彼が死ぬまで待っているわけにはいかないのです.
彼は凍った獣皮の硬く鋭い音を聞くと,しゅう長のテントが取り外されていることがわかるのでした.
コスクーシユは,置き去りにされて死んでいく運命にあったのです.
女たちが働いていると,彼女たちの仕事をせき立てている息子の声が,年老いたコスクーシユには聞こえてくるのでした.
彼は,もっととっくりと聞いておこうと耳をそば立てました.
彼にとっては息子の声を聞くのも,これが最後なのです.
子どもが泣き出しましたので,一人の女が泣きやませようとして,歌を歌ってやりました.
あの子どもはあの病弱なコティーだな,と老人は思いました.ほどなく死ぬだろう.そうすると,この子を埋葬するためにみんなで凍った土に穴を焼き抜くことだろう.
そうして,おおかみを寄せつけないように,小さな死体を石で覆うだろう.
わずかな年月を生きてはみたが,結局は死んでしまうんだ.
コスクーシユは,もう二度と聞くことのないほかの音を聞こうと耳を傾けました.男たちが,身の回りの品々をそりに縛りつけるために,強い皮のロープを結んでいる音.犬にそりをひかせて前進させようとして打つ皮のむちの鋭い音などが聞こえました.
犬がどんなに彼らの仕事をきらっているかがわかるのです.
人々はそりに乗って次から次へと,ゆっくりとその場から遠のいていき,やがて静かになっていきました.
彼の生活から部族の人たちの姿が消えて,彼はただ一人で死を迎えなくてはならなくなったのです.
1人の男がコスクーシユのそばに立って,年老いた頭にやさしく片手を置きました.
コスクーシュは,こういうこともされないで黙って息子に置いていかれた,ほかの老人たちのことを思い出しました.
彼は遠い昔のことを考え込んでいましたが,自分の息子の声で我に返りました.
「薪(まき)はわきに置いてあるし,火はあかあかと燃えてるからね」息子は言いました.
「朝になってもどんより曇っていて,寒気がきているんだよ.
もうすぐ雪の季節だな.もう今でも雪が降っているからね」
みんな荷物が重いうえに,食糧が足りなくておなかをすかしてるんだ.
わしはな,去年の葉っぱがまだ木にくっついとるようなもんじゃ.
わしはもう疲れた.何もかも,もうこれでいいのじゃ」
Reproduced by the courtesy of the Voice of America