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Episode-6 Bell the Cat
Episode-6 Bell the Cat
WORDS AND THEIR STORIES
きょうの表現は「ねこに鈴をつける」である。意味は危険な行動をあえてするである。
ねこは言語に多くの独特な表現を与えたが、これは、人間の中でねこがどのように生きて来たかをうかがわせるものである。
たいていの場合、「ねこの生活」といえば、「犬の生活」というのと同じくみじめなものだった。
けれども中には別のことを意味する言い回しもいくつか見出される。
その一つは「ねこに鈴をつける」という。人が何か危険な仕事を命ぜられた時、彼はねこに鈴をつけようとしているのだ、といわれる。
ねずみの一家は食物を手に入れることができなかった。ねこが怖かったからである。
ねずみは、一番いいのはねこの首に鈴をつけることだ、と決めた。
みんなはそれはいい考えだと同意したが、一匹の賢い年寄りのねずみが進み出てたずねた。「だれがねこに鈴をつけるのだね」
「チェシャーねこのようににやりと笑う」という表現がどうして始まったかについてはたくさん説がある。
私たちがたいてい最初に耳にするのは、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』に出て来るチェシャーねこである。
アリスは、耳から耳まで大口を開けてにやっとしている大ねこを台所で見つけて、本当に驚いた。
「あー、このねこはチェシヤー(イギリスの郡)の生まれですもの」とアリスは教えられた。
それから、ねこが台所から消え始めた。まず尾が、そしてそのにやりとした笑顔が最後に消えて行った。
しかしチェシャー郡出のねこの不思議な微笑は、ルイス・キャロルの物語よりずっと前から有名だったようだ。
ある看板絵かきが、この不思議な微笑を創造したようである。
笑っているライオンの絵をチェシャー郡の宿屋の看板にかいた。
それは不思議な微笑だった。というのも、ペンキ屋は、歯をむいてうなるライオンをかこうとしたからであった。
しかし今日「チェシャーねこのようににやりとする」という言い方は昔ほど使われなくなった。
でも「だれかの手先に使われる」という表現は今日でも使われる。
利用され、だまされ、だれかの代わりに不正な仕事をする、という意味である。
「ねこのような」ということばは、他人のうわさ話をしたり、悪口をいうのが好きな意地悪な人を形容するが、このことばは永遠に続きそうである。
というのはそんな人がいなくなることはないからである。
そんな人はねこの鋭い爪を出し、怒ってうなり声をあげるねこのようなそぶりを見せる。
近年アメリカのジャズ演奏家は、ねこということばを日常茶飯事に使った。
場所によっては「男」の代わりに「ねこ」ということばが使われる。
ただの平凡なねこもいれば、ジャズ通のねこもいるし、めかしこんだねこもいる。
偉大なアメリカの管楽器奏者、ルイ・アームストロングにいわせると、「真新しいステットソン帽子をかぶり、りっぱな黒の背広を着て、新しいエナメル皮のくつを履いていた。
そうでなければ、ねこが今日まで生き長らえているわけがないのである。
Reproduced by the courtesy of the Voice of America