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LITTLE WOMEN 若草物語 11-1

Chapter Eleven Experiments 経験が教える 1

Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
「六月一日、明日はキングさんの家の人、みんな海岸へ出かけていって、あたしはひまになるの! 
三ヶ月のお休み! なんてうれしいんでしょう!」 あるあたたかい日、家へ帰って来たメグが、ジョウを見つけてさけびました。ジョウは、いつになく疲れたようすで、ソファの上に横たわり、ベスがそのほこりだらけの靴をぬがしてやっていました。エミイは、みんなのためにレモン水をつくっていました。
 ジョウがいいました。「マーチおばさんも、今日お出かけになったわ。すてきでしょ。
いっしょにいってほしいと、いわれやしないかと、びくびくしちゃった。
それで、あたし、おばさんを早くたたせたいので、お気にめすように、それこそいっしょうけんめいにはたらいたわ。
だけど気のきいたこのおつきを、つれていこうと思われたら大へんだと心配したの。それでおばさんを馬車にのりこませると、なにかいってたけど聞えないふりをして、
大いそぎで逃げて帰ったの、ほんとに助かったわ。」
「よかったわね。それで、メグねえさん。この休みになにをなさるつもり?」と、エミイが尋ねました。
だって冬からこっち、朝早くからたたき起されて、ひとのためにはたらいてばかりいたんですもの。大いに休んであそぶのよ。」
ジョウがいいました。「ふうむ、あたしはそんなだらけたの大きらい。
たくさん本を集めておいたから、あの古い林檎の枝の上で、このかがやかしい少女時代をよくするために勉強するの。」
「あたしたちも、勉強はやめにして、おねえさんのまねしてあそびましょう。」と、エミイがいうと、ベスも、よろこんで、
「ええ、いいわ。あたし新らしい歌をすこしおぼえたいし、人形さんの夏服もつくらなければならないし。」と、いいました。
 そのとき、おかあさんが、針仕事の手をやめて、みんなにむかっていいました。
「一週間、はたらかないであそんでごらんなさい。
土曜日の晩になると、つまらないということが、きっとわかるでしょう。」
「そんなことありませんわ。とてもうれしいわ。きっと。」と、メグがいいました。
「ねえ。わが友、祝杯をあげましょうよ。
あそびは永久に! あくせくしっこなし!」と、ジョウはレモン水がいきわたったとき、そのコップを高くささげてさけびました。
 みんなはたのしそうに飲みほしました。そのときから、ぶらぶらあそびがはじまりました。
あくる朝も、メグは十時までねどこのなか。
ジョウは花瓶に花もささず、ベスはそうじをしないし、エミイの本はちらかったまま、
ただ「おかあさんの領分」だけが、きちんと片づいているだけでした。
この部屋では、メグは、休息も読書もできず、あくびが出るばかり、給料で夏のどんなドレスが買えるかなどと考えるのでした。
ジョウは、午前のうちはローリイと川へボートこぎにいき、今後は林檎の木の上で「広い世界」という物語を涙を流して読みました。
それから散歩にいきましたが、夕方になってぬれねずみになって帰って来ました。
 お茶のとき、四人はその日のことを、いろいろ話し合いましたが、たのしかったけれど、いつになくその日は、永く感じられたということに、みんなの意見は一致しました。
そして、つぎの日も、また、つぎの日も、休んであそびました。ところが、いよいよ一日が永く感じられ、なんとなくおちつかない気分になって来ました。
すると、悪魔は四人の心をねらい、いろんなわるいことを見つけて、あばれはじめたのであります。
 
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani
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