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LITTLE WOMEN 若草物語 11-3
Chapter Eleven Experiments 経験が教える 3
Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
「みんな、あたしのせいよ。えさも水もちっともないわ。」と、ベスはこわばって、つめたくなったカナリヤを手の上にのせて、かいほうしましたが、もうだめでした。
「お墓へいれてやるわ。もうあたし小鳥なんかかわない。」ベスは、すっかり気を落していました。
「おとむらいは、お昼からにして、みんなでおまいりしましょう。
台所へはいりましたが、台所は手のつけられないほど混乱し
ジョウは火を起し、お湯がわくまでに市場に買い出しにいくことにしました。
火は起きていました。ジョウはまず台所を片づけましたが、
ハンナがパンをやくように鍋にしかけたままにしてあったのを、メグがこねなおして、ストーブにのせたまま、
ジョウは、そこへとびこんでいって、「ね、パンがお鍋のなかでころがるようになったら、ふくらんだのじゃない?」
サリイは笑い出しましたが、メグはただうなずいただけでした。ジョウは、すぐにひきかえし、すっぱいパンをそのまま、かまにいれました。
そのとき、おかあさんは、どんなぐあいにやっているか、あちこちのぞきまわり、あわれなカナリヤを箱にいれて、着せてやる服をぬっているベスに、なぐさめの言葉をかけると、外へ出かけてしまいました。
娘たちは、なんだかもの足りない気がしました。 そこへ、クロッカーがやって来ました。
この人は、やせて黄色い顔をしたオールドミスで、いろいろとあたりをながめまわし、お昼の食事をごちそうになりたいといいました。
娘たちは、この人がきらいでしたが、年よりで貧乏で友だちもないから、親切にしてあげるようにいわれていました。
その人は、いろいろなことを尋ねたり、やたらに批評したり、知人のうわさ話をしたりしました。
その朝のジョウの苦しい骨折は、たいへんなものでありました。ジョウの骨折は、すべて失敗におわり、
パンは黒くこげ、サラダのかけじるは食べられるしろものではなく、
"Well, they can eat beef and bread and butter, if they are hungry, only it's mortifying to have to spend your whole morning for nothing," thought Jo, as she rang the bell half an hour later than usual, and stood, hot, tired, and dispirited, surveying the feast spread before Laurie, accustomed to all sorts of elegance, and Miss Crocker, whose tattling tongue would report them far and wide. 「まあ、いいわ。ビーフとパンにバタをつけて食べてもらえばいいわ。だけど、朝のうちまるで、むだになったのがくやしい。」 ジョウは、いつもより三十分おくれて食事のベルを鳴らしましたが、いつもりっぱな料理を食べつけているローリイと、失敗をほじくり出すような好奇の眼と、それをしゃべり散らす舌をもつクロッカーの前にならんだ料理をながめて、
ジョウは顔がほてり、すっかりしょげてつっ立っていました。ああ、料理はちょっと味をみただけで、のこされていきます。エミイはくつくつ笑い、メグはこまった顔をし、オールド・ミス・クロッカーは口をつぼめるし、ローリイは景気づけようとして大いにしゃべりました。
ジョウの最後の頼みはいちごでした。ガラスの皿に赤いいちごをもり、おいしそうなクリームがかかっています。
だが、それを食べたクロッカーは、しかめ面してあわてて水を飲みました。
ローリイは口をゆがめながらも男らしく食べてしまいました。
エミイは、むせかえり、ナプキンで口をおさえて、あたふたと食卓からはなれていきました。
ジョウはふるえながら、「まあ、どうしたの?」と、さけびました。
「お砂糖のかわりに塩をいれたんだわ。クリームすっぱいわ。」と、メグが答えました。
ジョウは、うめき声をたてて、イスにたおれかかりました。
ところが、がまんをしようとしても、おかしくてたまらないというような、ローリイの顔につきあたると、
ジョウはきゅうにこの事件がいかにもこっけいに思われ、涙のこぼれるほど笑い出しました。
すると、ぶつくさ屋のクロッカーもいっしょに、みんな笑い出し、不幸な宴会は、ともかく陽気におわりました。
「あたし、もう片づける元気ないわ。だから、おとむらいをして、すこしおちつきましょう。」 ジョウは、みんなが食卓をはなれたときにいいました。クロッカーは帰っていきました。きっとこの料理のことを、しゃべりたかったからでしょう。
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani