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LITTLE WOMEN 若草物語 11-4
Chapter Eleven Experiments 経験が教える 4
Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
ローリイは、木立のなかの、しだの下にお墓をほり、カナリヤはやさしいベスの手で、涙とともにうめられ、こけでおおわれ、すみれとはこべの花輪が、墓石の上にかざられました。墓石には、ジョウが、食事の仕度をしながらつくった詩が書かれていました。
おとむらいがすむと、ベスは悲しみと、さっきのえびとで、胸がいっぱいになり、じぶんの部屋へひっこみましたが、ベッドがそのままになっていて、ねる場所もありませんでした。
片づいているうちに、悲しみもやわらいで来たので、台所で片づけものをしているジョウの手つだいをしました。二人はへとへとにつかれました。
ローリイは、エミイを馬車にのせてつれ出しました。すっぱいクリームで気持がわるくなっていたエミイは、大よろこびでした。
やがて、おかあさんが帰宅しました。三人の娘たちがはたらいていましたし、戸だなをちょっとのぞいてみて、経験の一部が成功したことがわかりました。
ところが、やっと片づけたのに、三人は休むこともできませんでした。と、いうのは、数人の来客があり、
けれど、露とともにたそがれがせまるころ、姉妹たちは六月のばらが美しく咲きはじめたポーチに集りました。
「なんていやな日だったでしょう。今日は。」 ジョウが口をきると、メグが、
「いつもより短いような気はしたけど、とてもいやだったわ。」
「おかあさんと、カナリヤがいなければ、家のような気がしないわ。」とベスは、涙ぐんで、からの鳥かごを見あげました。
「みなさん、かあさんは帰って来ましたよ、ベス、カナリヤがほしければ、明日買ってあげましょうね。」
と、いいながら、おかあさんも娘たちの仲間入りをしました。おかあさんも、一日のお休みが、あまりたのしそうではありませんでした。
「みなさん、あなたたちの経験は、もうたくさんですか!」
「おかあさんは、みなさんが、どんなふうにやるかと思って、わざとなにもかもほうって、出かけました。
けれど、今日の経験で、みなさんは、家をたのしくするには、めいめいが、受持の仕事を忠実にやらなければならぬということがわかったと思います。
ハンナとあたしが、みんなの仕事をしていれば、あなたがたは、そう幸福で気らくだったとは思いませんが、とどこおりなくやっていけたのです。
だから、かあさんは、だれもかれも、じぶんのことばかり思ったら、どんなことになるか、教訓としてみんなに見せておきたかったのです。
あなたがたが、たがいに助け合い、まい日のお仕事があれば、ひまになったとき、それがとてもたのしく思えるし、くるしいときにはたがいに、しんぼうし合っていけば、家はどんなにたのしく美しいでしょう。わかりましたか?」
「わかりました。よくわかりました。」 娘たちは、口々にさけびました。
「では、かあさんのいうことを聞いて、もう一度、小さい重荷をしょうのですよ。たまには重く思えても、みんなのためになり、なれればかるくなっていきます。
はたらくことは健康にもよく、たいくつはしないし、わるい心も起らないものです。
身体にも心にもよく、お金や流行ものなどより、精神力や独立心をあたえてくれます。」
メグは、おかあさんにかわって、おとうさんへ送るシャツをぬう、
ベスはピアノやお人形あそびにあまり時間をとれないで、まい日勉強する、
エミイは、ボタンのあなかがりがじょうずになるように、また文法にかなう言葉づかいのけいこをすると、てんでに決心をのべました。
「けっこうです。かあさんは、今度の経験がうまくいって、よかったと思います。もうくりかえさなくてもいいと思います。でもね。どれいのように、はたらきすぎないように、
はたらくにもあそびにも、時間をきめて、まい日を有益にたのしく送って、時間をじょうずに使い、時間のねうちをさとるようになさい。
それできたら、貧乏でも、娘時代をたのしくすごせるし、年をとってからも後悔することもなく、この人生をりっぱに生きていけるのです。」
「よくわかりました。」と、娘たちは、おかあさんの教訓を、ふかくも心にとどめました。
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani