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LITTLE WOMEN 若草物語 12-1
Chapter Twelve Camp Laurence ローレンスのキャンプ 1
Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
ベスは郵便局長でした。たいてい家にいて、時間をきめて局へいくことができましたし、かぎで小さな扉を開けて、郵便物をとって来て、くばるのがすきだったからです。
七月のある日のこと、ベスはりょう手にいっぱい郵便物をかかえて帰り、家中にくばりました。
「おかあさん、はい、花束、ローリイは一度も忘れたことないのねえ。」と、いって、ベスはおかあさんの花瓶にさしました。
「メグねえさんには、手紙が一本、手ぶくろが片っぽ。」 メグは、おかあさんのそばにすわって、シャツのそで口をぬっていましたが、
「片っぽなんていやだわ。でもそのうちに片っぽ見つかるでしょう。
あたしのお手紙は、ドイツの歌の訳したのがはいっているだけ、
「ジョウ博士には、手紙が二通、本が一冊、おかしな古帽子、帽子は大きくて、郵便局からはみ出していました。」ベスは、書斉でなにか書きものしているジョウに、笑いながらいいました。
「まあ、いやなローリイさん、あたし日にやけるから大きな帽子がはやるといいといったら、
流行なんか気にしないで、大きな帽子かぶりなさいっていうから、あればかぶるといったの。いいわ。あたしかぶって、流行なんか気にしないこと見せてあげよう。」
その帽子をそばの胸像にひっかけて、手紙を読みはじめました。
それはおかあさんからの手紙で、ジョウの目はよろこびにかがやきました。
「愛するジョウ――あなたが、かんしゃくをおさえようと努めているのを見て、かあさんはたいへんうれしく思っています。
あなたはその試み、失敗、成功についてなにもいわないし、日々あなたを助けて下さる神さまのほかには、だれも見ていないと考えておいででしょう。
けれど、かあさんものこらず見ていました。そして、りっぱな実がむすびそうですから、あなたの決心が真心からであることがわかります。
愛する娘よ、しんぼう強く勇ましくやり通して下さい。かあさんが、あなたに同情をよせていることを、常に信じて下さい。」
「まあ、うれしい。百万円もらって山ほど賞讃されるよりうれしい。
かあさんが助けて下さるんですもの、あたしやります。」
ジョウは、顔をふせたので、うれし涙で原稿をぬらしてしまいました。
やっと顔をあげたジョウはこのありがたい手紙を、ふいにおそって来る敵へのふせぎの楯にするつもりで、上衣の内がわにピンでとめました。
「やあ、親愛なるジョウさん、明日、イギリス人の男の子と女の子が二三人来るから、おもしろくあそびたいのです。
天気がよかったら、ロングメドウへボートでいってテントを張り、べんとうを食べてからクロッケーをし遊ぼうというわけ。焚火をし料理をつくり、ジプシイみたいにやるつもり、
ブルック先生もいっしょで、男の子のかんとくをして下さるし、ケイト・ボガンさんが女の子をとりしまって下さいます。
「すてきだわ!」と、ジョウはさけんで、メグに知らせるためにいそぎました。
「ね、かあさん、いってもいいでしょう。いけばローリイも助かるわ。あたしボートこげるし、メグはおべんとうの世話ができるし、エミイやベスだってなにか役にたつわ。」
あの人たちのこと知ってる?」と、メグがいいました。
ケイトはあなたより年上、ふた児のフレッドとフランクはあたしぐらい、グレースは九つか十でしょう。
ローリイは、その人たちと外国で知り合ったんだって。兄妹のうち男の子が好きらしいのよ。
でもローリイは、ケイトをあまり好きでないらしいわ。」
メグとジョウは、着ていく服について話し合いました。
キャンプだから、しわくちゃになってもかまわないものにすることにきまりました。
ジョウは、「さあ、精出して、今日中に、二倍の仕事をしておきましょう。明日、安心して遊べるように」といって、ほうきをとりにいきました。
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani