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LITTLE WOMEN 若草物語 14-4
Chapter Fourteen Secrets 秘密 4
Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
さて、それから一二週間というもの、ジョウはいかにも奇妙なふるまいが多かったので、みんなおどろいてしまいました。
郵便屋の足音がすると玄関へかけていったり、ブルック先生につっけんどうにしたり、じっとすわりこんで悲しそうな顔をしてメグをながめたり、きゅうに、メグにとびついてキッスしたり、
ローリイが来ると、二人で目くばせして、新聞のことを話したり、いったい、どうしたというんでしょう?
ある日、ジョウは家のなかへとびこんで来て、ソファに横になり、新聞を読むふりをしていました。
「おもしろそうね、読んでちょうだい。」 メグがいうと、
ロマンチックな作で、出て来る人物は最後にみんな死んでしまうという、かなり悲壮なものでした。
「ああ、あたし肩身がひろい。」と、ベス。 この成功に、みんなはおどり出したいほどよろこびました。
おかあさんもどんなにほこらしく思ったでしょう。よろこびが、家中をあらしのようにひっかきまわしました。
ジョウは目にいっぱい涙をため、ミス・ジョセフィン・マーチと印刷された名前の新聞が、みんなの手から手へわたるのをながめていました。
「ローリイは笑わなかった?」と、ジョウのまわりに集った家中の者が、つぎつぎにさけびました。
ジョウは、じぶんの作品を売りにいったときのことを話し、返事を聞きにいったら、二つともおもしろいが、はじめての人には原稿料を出さないで、ただ新聞にのせるだけ、
そのかわり、いいものを書けるようになったら、原稿を買いに来るということだったと話しました。
「それで、あたし二つともわたして来たの。そしたら、今日これを送って来たの。ローリイが見せろってきかないから見せてあげたの。
ローリイは、よくできているからもっと書けというの。そしてこのつぎから原稿料を出させるようにしてやるって。あたし、うれしいわ。じぶんで書いたもので食べていけて、みんなのくらしもらくにすることが、できるかもしれないんですもの。」
ジョウは、一気でしゃべって息がきれました。そして、新聞で顔をおおって、涙でじぶんの小説をぬらしてしまいました。ペンで、一人立ちして、愛する人からほめられるようになることは、一ばんジョウにとっては、うれしいことでありました。
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani