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LITTLE WOMEN 若草物語 22-2

Chapter Twenty-Two Pleasant Meadows たのしい野辺 2

Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
 ところで、その日のごちそうは、マーチ家では、はじめてのすばらしいクリスマスのごちそうで、
そして、お客はローレンス老人、ローリイ、それからブルック氏で、
健康を祝して乾杯し、語りあい、歌を合唱しあって、ごちそうを食べ、心ゆくばかりたのしいときをすごしました。
娘たちは、今年の思い出話をしましたが、
じっと耳をかたむけていたおとうさんは、満足そうにいいました。「小さい巡礼さんたちの旅としては、今年のあと半分はくるしい旅だったね。だけど、みんな勇ましく歩いて来たし、めいめいの重荷も、うまいぐあいにころげおちそうだね。」
「どうしておわかりですか? おかあさんからお聞きになりました?」と、ジョウが尋ねました。
「まだ、そんなに聞いてはいないが、わらの動きかたで風向きがわかるね。それで、おとうさんは、今日いろいろなものを発見した。
 おとうさんは、にっこり笑って、むかいがわにすわっているジョウをながめて、
「髪をきったが、一年前の息子のジョウではなくなった。
今は看病と心配のつかれで青い顔をしているが、ずっとおだやかな顔つきになった。
むかしのおてんば娘がいなくなって、すこしさびしいが、そのかわり頼もしい心のやさしい娘があらわれた。」
「こんどはベスね。」と、エミイはじぶんの番の来るのを待ちどおしく思いました。
「ベスは、病気でこんなに小さくなったから、うっかりしゃべっているあいだに、どこかへ消えてしまいそうだね、まあ、前ほどはにかまなくなったようだが。」
と、おとうさんは、もうすこしでこの子を失うところだと思い、しっかりとだきしめ、「ベス、どうかいつまでもじょうぶでいてほしいね。」
 みんなだまって、それぞれなにか考えていました。と、おとうさんは、足もとのエミイの髪をなでながら、
「エミイは、食事のとき、いつもとちがって、鳥の足の肉をとったし、またお昼からはお使いをしたし、しんぼうづよく、みんなのお給仕もしたね、
おしゃれもしなくなったし、指にはめているきれいな指輪のことも口に出さなかったね。これでおとうさんには、エミイがじぶんのことより、他人のことをよけい考えるようになったことがわかってうれしい。」
 おとうさんの話がすむと、ジョウがベスにむかって尋ねました。「ベス、あなたなにを考えているの?」
「あたし、今日、天路暦程のなかで、クリスチャンとホープフルが、いろいろくるしい旅をつづけたあげく、年中ゆりの花のさいていてたのしい緑の野辺について、ちょうど今のあたしたちのように、目的地にむかって、また出発する前に、そこでたのしく一休みするところを読みました。」と、ベスはいって、おとうさんのそばをはなれてピアノの前にいきました。「お歌の時間でしょう。
おとうさんのお好きな、巡礼の聞いた羊飼いの少年の歌、あたし作曲しましたの。」
 そういって、ベスはピアノをひき、二度ともう聞けないかと思った美しい声で、ベスにふさわしい古風な讃美歌をうたいました。
へりくだるものにおそれなく
ひくきにあるものにほこりなし
まずしきものは、とこしえに
神のみちびきえらるべし
われもつものにことたれり
たとえおおくもすくなくも
ああ、そのたるをしるこころ
主のこころにかなうべし
おもにはかたにおもくとも、
じゅんれいのたびをつづけつつ
このよのさちはうすくとも
主のしゅくふくをうけるならん。
 
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani
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