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LITTLE WOMEN 若草物語 3-5

CHAPTER THREE The Laurence Boy ローレンスのぼっちゃん 5

Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
頼みにいってもらう人もいないし、ここへはとめてもらえないし、
あたしハンナが来たら、なんとか考えるわ。
あなたもいって、あたしにコーヒーもらって来てよ。あたし疲れて動けないわ。」
やっと食堂にはいり、コーヒー茶わんに手をかけたとたん、こぼして服の前をよごしてしまいました。
それを、あわてて手袋でこすったので、手袋もよごしてしまいました。
「お手伝いしましょう。」 親しみのある声がしました。
それは片手にコーヒー茶わん、片手にアイスクリームの皿をもったローリイでした。
「あたしねえさんのところへ、コーヒーをもっていこうとしましたら、また、やりそこないましたの。」
「ちょうどいい。わたしがもっていってあげましょう。」
 ジョウがさきにいきました。ローリイは、なれたものごしで、コーヒーとアイスクリームを、メグにすすめ、ジョウのために、もう一度とりにいってくれました。
メグはびっこをひきひき帰り支度をしに二階へいきました。
そのあいだに、ジョウは玄関へいって、下男らしい人に、馬車をやとうことを頼みましたが、
すると、ローリイが聞きつけて来ていいました。「どうか送らせて下さい。
道はおなじですし、それに雨もふっています。」
ローリイは、じぶんを迎えに来たおじいさんの馬車に、メグとジョウとハンナをのせました。みんなは、ぜいだくな箱馬車にのって、たのしい、ゆたかな気持にひたりながら帰りました。
ローリイは馭者台にのったので、メグは痛い足を前に出すことができ、姉妹は気がねなしに話をすることができました。
「あたし、とてもおもしろかったわ。」と、ジョウは髪をかきあげながらいいました。
「あたしもよ、けがするまでは、サーリイさんのお友だちの、マフォットさんという方と仲よしになったのよ。サーリイさんと一週間とまりがけで来るようにといって下すったわ。
サーリイさんは、春になってオペラがはじまるといらっしゃるんですって。あたしおかあさんがいかして下さるといいけど。」 メグは元気づきながらいいました。
「おねえさんは、あたしがにげ出したあの赤い髪の人と踊ったのね、あの人、いい人だった?」
「ええ、髪はとび色よ。ていねいな方で、あたし気持よく踊ったわ。」
「あの人、足を出すとき、ひきつった、きりぎりすみたいだったわ。
ローリイさんとあたし笑ってしまったわ。あたしたちの笑うの聞えなかった?」
「いいえ、それやぶしつけだわ。あなたたち、そこにかくれて、なにしてたの?」
 ジョウは、そこでじぶんたちのやったことを話しました。その話がおわったとき、馬車は家へつきました。
姉妹は、あつくお礼をのべて馬車をおり、そっと家へはいりましたが、扉の音で二つの小さな頭がうごき、ねむそうな、けれど熱心な声がしました。
「ねえ、会の話をしてよ?」
 ジョウは、メグのいう、ひどいお作法をやって、妹たちにボンボンをもってきてやりました。妹たちはそれをもらい、その夜の胸のわくわくするような話を聞いて、まもなく寝入ってしまいました。
メグは、ジョウは、薬をぬってほうたいをしてもらいながら、「馬車で夜会から帰り、ねま着のまますわって、女中に世話してもらって、りっぱな貴婦人みたいだわ。」と、いいました。
「あたしたちは、髪の毛をやいたり、服が古かったり、手袋が片方だけだったり、きつい靴をはいてくるぶしをくじいたり、とんまのまぬけだけどね、たのしかったわねえ。」と、ジョウがいいましたが、ほんとにそのとおりだったのです。
 
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani
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