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LITTLE WOMEN 若草物語 5-3

CHAPTER FIVE Being Neighborly おとなりどうし 3

Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
 ローリイは、マーチ家の人たちのことについてたくさんの興味をもち、ジョウの口から姉妹たちのことを聞いてうれしそうでした。ことに、ジョウが、せっかちの、気むずかしいおばさんの世話をしにいく話をおもしろがって、そのおばさんのところへ気どった老紳士が結婚申込に来たとき、むく犬がその紳士のかつらをひっぱって、はげ頭がむき出しになった話では、ころげまわって、涙が出るほど笑ったので、女中がおどろいて、のぞきに来たくらいでした。
 ジョウは、話が成功したのでとくいになって、家のお芝居のこと、いろんな計画のこと、おとうさんのこと、その希望や心配、家のなかの一ばんおもしろいことなど、のこらず話しました。
それから本の話になりましたが、ジョウはローリイがやはり本ずきで、じぶんよりもたくさん読んでいるのをうれしく思いました。
「そんなに本がすきなら、おじいさんの文庫へいきましょう。」
 ずらりとならんだ本のほかに、絵や彫刻や古い品物のはいったたんすがあり、ゆったりしたイスがそなえてありました。ジョウは、そのビロウド張りのイスに腰をかけて、
そのときベルが鳴りました。あ、おじいさんだと、はっと、しましたが、
まもなく女中が来て、お医者さんが来たといい、
ローリイは診察してもらいに出ていきました。
ジョウは、ほっとして、文庫のなかを見物しましたが、老紳士のりっぱな肖像画の前に足をとめてながめました。そのとき、扉が開いたけれど、ジョウはふり返ってもみずに、「この人、親切そうな目をしていらっしゃるから、あたしもうこわくないわ。でも口もとはきつそうだし、とても意地っぱりみたいね。うちのおじいさんほど、きれいではないけど、あたし好きだわ。」
 すると、うしろで声がしました。「どうも、ありがとう。」 ふりかえると、ローレンス老人が立っていたので、ジョウはちぢみあがりました。
顔はあかくなり動悸がうちます。逃げ出すのに卑怯だし、ふみとどまることにしたものの、ほんものの老人の目は、肖像画の目よりも、もっとやさしかったので、そんなにこわくなくなりました。
「そんなに。」
「あなたのおじいさんほど、きれいではないというのだね?」
「ええ、きれいではありませんわ。」
「わしは、意地っぱりかね?」
「そう思います。」
「それだのに、わしが好きだって?」
「ええ、好きです。」
 この答えが老人をよろこばせました。
 
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani
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