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LITTLE WOMEN 若草物語 5-2
CHAPTER FIVE Being Neighborly おとなりどうし 2
Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
そのあいだに、ローリイはお客を迎えるために、髪にブラシをかけ、あたらしいカラをつけ、五六人の召使たちに部屋をかたづけさせました。
やがて、ジョウが玄関にたちベルをおしました。ローリイは、こころよくジョウを迎えました。
ジョウは、親切のあふれた顔をして、片手にはおおいをした皿をもち、片手にはベスの三匹の子ねこをだいてあらわれました。
「おじゃまにあがりました。荷物までしょって、おかあさんがよろしくって。
メグはお手製の白ジェリイをお見舞ですって。おいしいんですよ。それから、ベスはねこをおなぐさみにつれていくようにって。お笑いになるでしょうが、ことわりきれなくて。」
ローリイは、ねこを見て笑い、はにかみを忘れ、すぐにうちとけました。ジョウが、皿のおおいをとると、緑の葉のわと、エミイの秘蔵のジェラニュームの赤い花をそえた白ジェリイがあらわれました。
「たいしたものではないの。ただ、みんながお目にかけたかっただけ。
でも、あっさりしてるからめしあがれてよ。それにやわらかいから、のどが痛くても、するっとはいってしまうわ。それはそうとこの部屋なんて気持がいいんでしょう。」
ジョウは、てきぱきとはたらきました。部屋の感じが一変したので、ローリイは満足してお礼をいいました。
「さあ、今度はぼくがお客さまをよろこばせなくちゃ。」
「いいえ、あたしはあなたをなぐさめに来たのよ。なにか本を読んであげましょうか?」
「ありがとう、でもそこにある本、みんな読んでしまったんです。だから、あなたさえよかったら、お話のほうがいいんだけど。」
「いいですとも、一日だって話すわ。ベスはあたしがおしゃべりをはじめたら、いつやめるかわからないなんていうのよ。」
「ベスさんというのは、ときどき小さなバスケットをもって出ていく、あかい顔の。」
「すると、あの美しいかたがメグさんで、まき毛のかたがエミさんですね?」
ローリイは、さっと顔をあかめました。「だって、ここにいると。たのしそうなみなさんがよく見えるんですもの、
夜、カーテンを閉め忘れた窓ごしに、おかあさんをかこんで、いらっしゃるところも見えます。
おかあさんのお顔は、やさしく花のようです。ああ、だけど、ぼくには母はいない。」
母の愛にうえた少年の目は、ジョウのあたたかい胸をうごかしました。
すなおなジョウは、じぶんが、いかにゆたかな家庭の愛に恵まれているかを感じたので、よろこんでそれを病気のさびしいかれに、分けあたえたいと思いました。
「では、カーテンをおろさずにお好きなだけ見せてあげます。いいえ、それより家へいらっしゃい。
おかあさんはいい人よ、ごちそうたくさんして下さるわ。ベスは歌をうたい。エミイはダンスをする。
メグとあたしはおかしなお芝居の道具を見せて笑わしてあげるわ。そうして、みんなでおもしろく遊ぶのよ。でも、おじいさん来させて下さる?」
「あなたのおかあさんが頼んで下さればね。おじいさんは親切で、ぼくのすきなことをさせてくれます。」
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani