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LITTLE WOMEN 若草物語 5-1

CHAPTER FIVE Being Neighborly おとなりどうし 1

Alcott, Louisa May オルコット ルイーザ・メイ
AOZORA BUNKO 青空文庫
「まあ、ジョウ、なにをなさるの?」 ある雪のふる午後、妹のジョウがごむ靴をはき、古ばけた上衣に、ずきんといういでたちで、ほうきとシャベルをもって広間へ出て来たのを見て、そうたずねました。
「今朝、二度も散歩して来たんだもの、たくさんだわ。家にいて火にあたりなさいよ。」
「いやなこった。ねこじゃあるまいし、火のそばでいねむりなんかするの大きらい。あたし冒険がすき、これからなにかさがしにいくの。」
 メグは炉に足を出して本を読み、ジョウは通路の雪をどけはじめました。
ところで、マーチの邸はローレンスの邸と、生垣でへだてられていました。
いずれも、森や芝生の多い、いなかめいた気分のなかにつつまれていましたが、
 けれど、ローレンスのりっぱな家はなんとなくさびしく、ここにおじいさんと、ただ二人で住むぼっちゃんに友だちもありませんでした。
ジョウは考えました。かわいそうに、少年の心のわからないおじいさんから、お部屋にとじこめられているんだわ。ローリイには、にぎやかな、わかわかしい遊び相手がいるんだわ。」
 ジョウはなんとかして、ぼっちゃんを誘い出そうと、冒険をもくろんでいると、
すてき、すてき、ぼっちゃん一人ならと、生垣のところまで道をつけていくと下の窓にはカーテンがおりていて、召使の姿も見えませんが、上の窓には、やせた手と、ちぢれた髪の黒い頭が見えました。
 ジョウは、一かたまりの雪を窓を目がけてなげました。黒い頭がすぐにふりむき、大きな目がいきいきとかがやきました。
「いかが、御病気なの?」
 ローリイは、窓を開けてしゃがれ声で答えました。
「ありがとう。いくらかいいんです。ひどいかぜをひいて、一週間ねちゃいました。」
「まあ、お気のどく、なにして遊んでいらっしゃるの?」
「なにもしてません。家はお墓みたい。」
「本は読まないの?」
「あんまり読みません。読ませてくれないんですもの。」
「だれにも読んでいただけないの?」
「おじいさんに、ときどき。でもぼくの本はおじいさんにおもしろくないし、ブルック先生に頼むのは、いつだっていやだし。」
「じゃ、お見舞に来る人もいないの?」
「いないんです。男の子はがやがやさわぐし、ぼくは頭がよわってるんです。」
「女の子はいないの、本を読んだりなぐさめてくれる女の子は? 女の子は静かだし、看護婦ごっこすきよ。」
「そんな女の子知りませんもの。」
「あんた、あたしを知ってる?」 ジョウが笑うと、
ローリイがさけびました。「知ってる! あんた来てくれる?」
「ええ、あたしは、おとなしくも、やさしくもないけど、おかあさんがいいとおっしゃったらいくわ。」
 
Copyright (C) Louisa May Alcott, Masaru Mizutani
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