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The Return of Sherlock Holmes シャーロック・ホームズの帰還

The Adventure Of The Norwood Builder ノーウッドの建築家 8

Sir Arthur Conan Doyle アーサー・コナン・ドイル
AOZORA BUNKO 青空文庫
「ところでレストレイド、この注目すべき発見をしたのは誰だ?」
「家政婦のミセス・レキシントンです。夜勤の警官に知らせてくれました」
「その警官はどこに?」
「残って犯行現場である寝室の警備に入っています。誰も手を触れないように」
「でも、どうして警察は昨日のうちに気がつかなかったんだ?」
「まあ、ホールを注意深く調べる理由は特にありませんでしたからね。
ご覧のとおり、非常に目立つ場所というわけではありませんし」
「そうか。そうとも、そのとおりだ。
問題の指紋が昨日からそこにあったのは間違いないだろうね?」
レストレイドはホームズを見た。まるで、気が狂ったのだとでも思っているかのような目つきだった。
正直に言って、私自身も、ホームズの浮かれた態度やでたらめな発言に呆れていた。
「マクファーレンが自分に不利な証拠を追加するために、夜、留置所を抜け出してきたとでも思うんですか? 
指紋がマクファーレンのものではないのか、世界中のどの専門家にだって任せられますよ」
「間違いなく彼の指紋だけどね」
「じゃあ、それで十分です。
私は現実的な人間です、ミスター・ホームズ。証拠を握ったときは、結論を下すのですよ。
また何か言いたいことあるんでしたら、私は居間で報告書を書いていますから」
ホームズは落ち着きを取り戻していたが、それでも表情にはかすかな喜色を浮かべていた。
「まったく、実に残念な展開だね、ワトスン? 
それでも、依頼人の希望を繋ぐ奇妙な点もあるよ」
「聞かせてもらえると嬉しいね」と、私は心から言った。
「もう終わりかと思っていた」
「まだ何とも言いがたいところでね、ワトスンくん。
実のところ、レストレイドがたいそう重要視しているあの証拠には、本当に重大な欠点があるんだ」
「そうなのかい、ホームズ! いったいどんな?」
「ただね、僕は知っているんだよ。あの血痕は、昨日ホールを調べたときにはなかったと、知っているんだ。
さ、ワトスン、日向をちょっと散歩しよう」
2人で庭を歩き回った。頭の中は混乱している。だが、胸の中には暖かい希望が戻ってきていた。
ホームズは家をいろんな向きから、興味深そうに調べた。
それから道を通って中に入って、地下室から屋根裏部屋まで見て回った。
ほとんどの部屋には家具が置かれていなかったが、それでもホームズはあらゆる部屋を細々と調べていった。
最後に、使われていない寝室が3つある最上階の廊下にくると、ホームズは再び先ほどの発作に襲われた。
「この事件には、まったく、実にユニークな特徴があるね、ワトスン。
レストレイドくんに僕らの秘密を打ち明けてやるときだと思う。
僕らをだしにほくそえんできたから、同じだけのことをしてやってもいいだろう。もし僕の読みが正しかったと分かればね。
ああそうだ、こうやればよさそうだな」
スコットランドヤードの警部は、まだ応接室で書類を書いていたが、そこにホームズが割りこんだ。
「なるほど、この事件の報告書を書いているんだね」
「そうですよ」
「まだちょっと早いと思わないか? 
僕は、その証拠が完璧ではないと思わずにはいられないよ」
レストレイドは非常によくホームズの事を知っていたので、その言葉を無視できなかった。
ペンを置き、興味深そうにホームズを眺めた。
「どういう意味ですか、ミスター・ホームズ?」
「ただ、君がまだ会っていない重要な証人が1人いるということだよ」
「連れてこられますか?」
「たぶんね」
「では連れてきてください」
「ベストを尽すよ。部下は何人いる?」
「呼び声が聞こえるところに3人」
「完璧だ!」と、ホームズ。
「3人とも頑丈で大柄な警官で、力強い声をしているのか、聞いてみてもいいかな?」
「そうですとも。部下の声がどう何になるのかは分かりかねますがね」
「まあ、分かってもらえると思うよ。2、3のおまけつきでね」とホームズ。
「どうぞ、部下を呼んでください、やってみせましょう」
 
Copyright (C) Sir Arthur Conan Doyle, Kareha
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